不動産価格が暴落する可能性があるとされていた「2019年問題」。2018年に「世帯数増加のピークは2023年まで延びる」という最新の推計が発表されたことで、いったんは危機を回避したかのように見えました。しかし、また新たな2019年問題が注目されています。
不動産の2019年問題とは?不動産価格は本当に下落するのか
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
ここでは、2019年問題をはじめ、不動産価格がピークアウトを迎えるといわれる要素について検討し、売買や投資の際に何をもって時期を見極めるべきかを考えます。
2019年に不動産価格が暴落する?
ここ数年、不動産価格が暴落する可能性があるとして、市場に与える影響が懸念されてきた2019年問題。国立社会保障・人口問題研究所が2013年1月に発表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」において、国内の世帯総数が2019年にピークを迎えるとされていたことから、世帯数が減少に転じるとともに、住宅の需要と供給のバランスが崩れるというのがその根拠でした。
しかし、最新の推計で、世帯総数のピークは2023年まで延びることがわかり、ひとまず急な値崩れはないという見通しに変わっています。
ところが、ここ最近、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックにまつわる2019年問題が注目されるようになりました。新たな2019年問題は、「短期譲渡所得」か「長期譲渡所得」かによって大きく異なる、所得税と住民税の税率を根拠としています。
所有期間によって税率が大きく異なる
土地や建物を売却するときは、購入時と同様にさまざまな経費がかかります。中でも大きいのが、不動産を売却したことによって得た、譲渡所得(売却した価格-購入した価格)にかかる所得税と住民税です。
所得税の住民税は、まとめて「譲渡所得税」と呼ばれることもあります。譲渡所得税の税率は、当該不動産を所得していた期間によって異なります。
・所有期間が5年以下の場合:短期譲渡所得
譲渡所得×39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
・所有期間が5年を超える場合:長期譲渡所得
譲渡所得×20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
こうして比較すると、所得期間によって税率が倍近く違ってくることがわかります。オリンピック開催による地価高騰を狙って数年前に不動産を購入した投資家たちも、長期所得扱いになる2019年を待って売却し始めるのではないかと予測されています。このような状況から、供給過多による値崩れが危惧されているのです。
また、東京オリンピック・パラリンピックの開催決定と同時に東京の不動産を買い求めた外国人投資家は、家賃収入ではなく売却益を重視しているため、迷わず売り抜けると考えられています。
ほかにもある○年問題
2019年問題のほかにも、不動産価格の暴落があるのではないかといわれている時期があります。不動産に関連する、おもな○年問題をご紹介しましょう。
2022年問題
2022年問題は、三大都市圏の特定市にある「生産緑地」が大量に宅地転用されて、不動産価格が下がるというものです。
生産緑地法によって、都市圏における緑地や農地の減少を食い止めるため、1992年に生産緑地が指定されました。生産緑地は、建物を建てるなど、営農以外の行為が制限される代わりに、税の優遇措置がとられます。生産緑地の指定期間は30年。つまり、2022年に制限が撤廃されることになるのです。このことから、農業を続けられない、もしくは続けるつもりがない農家が土地を手放すのではないかと予想されています。
なお、現時点では、政府が事前措置として複数の法改正を行ったことにより、宅地転用される農地はごく一部で、影響は少ないというのが大方の見立てです。
2023年問題
前述した2019年問題が実質先延ばしになったことで、次に同様の問題が起きると考えられているのが2023年です。
これは、世帯を構成する人の数が減り、世帯数そのものも減っていけば、ファミリー向けの住宅はもちろん、物件自体の売れ行きも鈍り、過剰供給となったマンションが売れ残って価格が下落するというものです。
現実には、世帯数が減少に転じたからといって、急激に不動産価格が暴落することはないと考えられています。しかし、単身世帯すら減っていけば、住宅の需要も減っていくのは明らかです。今後も注意して経過を見ていく必要があるでしょう。
2025年問題
2025年は、団塊の世代が後期高齢者になる年です。団塊の世代は、約200万人。働きざかりの人が急激に減る一方で、高齢者が爆発的に増えることになります。
この、2025年問題による影響は、おもに2つ挙げられます。
・相続の大量発生と売却の増加
団塊の世代が後期高齢者になると、相続される不動産が大量に発生し、相続した不動産の売却も増加します。しかし、不動産購入の主力層である30~40代の人口は減少しているため、供給過多の状態に陥る可能性があります。
・公共施設の統廃合が進む
高齢化が進む日本では、利用者が減少した公共施設や学校などが閉鎖を決め、統廃合が進んでいます。高齢化に加えてエリアの人口が減少すれば、地域そのものが統廃合される可能性もあるでしょう。
当該エリアを選ぶきっかけになった利便性が失われたり、ブランド価値のあるエリアの名称が変更されたりすればエリアの価値そのものが低くなるため、「その前に売却しよう」という一定のニーズによって市場に出回る物件が増え、不動産価格が下がると考えられています。
本当に不動産価格は下がる?
結論からいえば、不動産価格が今より下がることは、ほぼ間違いありません。これまでは、神話や都市伝説のようにいわれ続けてきた「不動産価格の下落」ですが、最近は具体的な下落幅を示す数字とともに、話題に上るようになりました。
しかし、実質的には、「下がる」というより「実態に即した価格に戻る」という表現が適切です。なぜなら、今の不動産価格が高すぎるからです。
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの需要増加や、働き方改革による労働時間の短縮、休日取得日数の増加などによって建築費は高騰し、需要の高い都心部の地価は上昇を続けています。今、首都圏で条件の良いマンションを買おうとすれば、5,000万円は下りません。マンションを購入する中心的な世代である30~40代の平均年収が400万~500万円くらいであることを考えると、必然的に購入者は、一部の富裕層に限られることになります。さらに、不動産価格が上昇すれば、格差はより顕著になり、購入を断念する人も増えるでしょう。
東京オリンピック・パラリンピック閉幕後は、こうした状況が少しずつ落ち着き、建築にかかる原価も次第に抑えられるようになります。それに伴って、釣り上げられた物件価格も元に戻り始めるでしょう。つまり、本来あるべき価格に近づいていくということです。
しかし、今から2~3年のうちに市場に出回る、現在建築中の新築物件は、オリンピック特需で地価が高騰しているときに購入した土地に建てられるため、大幅な値下げは難しいでしょう。まずは、中古物件から次第に値頃感が出てくると考えられます。
価格が下がったら買い時?
不動産の購入を検討している人にとって気になるのは、「結局いつが買い時なのか」ということでしょう。買い時を判断する上では、不動産価格以外に「金利」にも注目する必要があります。
2000年代前半の不動産が今より安価で大量供給されていた時代、金利は今より3%以上高く設定されていました。時代は変わり、不動産価格が1.8倍に上昇する一方で、2016年に過去最低を記録した住宅ローン金利は最低水準のまま推移しています。
総支払額に大きく影響する金利は、景気をはじめとする外部要因によって変動するものです。金利が高いときに購入すれば、購入後、金利が下がったときに借換えをするという選択肢がありますが、超低金利の物件には、借換えの選択肢がありません。これから数年のあいだに市場に出回る新築物件については、「超低金利ゆえのリスク」があることを念頭に置いて購入を検討することが大切です。
住宅ローンには、景気動向によって金利が変わる「変動金利型」、ローンの完済まで同額の金利が適用されるフラット35などの「全期間固定型」、あらかじめ定められた固定金利期間が終了した後は変動金利型か固定金利型かを選ぶ「固定金利期間選択型」などがあります。いずれを選ぶにしても、現在の金利の下落傾向はしばらく続くという予測を基に支払い計画を立て、買い時を判断するようにしましょう。
売却側にとっては売り時?
中古のマンションや一戸建ての価格相場は新築の相場に連動するため、売却を検討している人にとっては、不動産価格が上昇し続けている今が売り時です。
東京オリンピック・パラリンピックによる価格高騰を見越して不動産を購入した外国人投資家などは、不動産価格が下落傾向に転じる前に物件を手放すでしょう。以前から買替えや住み替えを検討していた人も、価格が落ちる前に売却を決める可能性があります。市場に多くの物件が出回って過剰供給になる前に、本格的に動き出すことをおすすめします。
景気動向と需要・供給の見極めがカギ
買い物をするとき、同じような商品なら誰でも「価格が安いほう」を選ぶものです。食品や日用品を購入する前に、別のお店の同じ商品の価格と比べて適正価格を判断し、より安く良いものを探す人は多いでしょう。
「価格が安い物を、安いときに買う」「高いときに売る」のがベストという意味では、不動産も同じです。しかし、政策や金利などの影響を大きく受ける不動産は、単純に商品だけを比較して価格の適性を判断するわけにいかないのが難しいところです。
不動産の売買や投資にあたっては、2019年問題、2025年問題など、不動産価格の下落を引き起こす可能性がある要素や、需要と供給のバランス、景気の動向を加味した上で価格を見極めることが重要です。「物としての価値」と「価値に対する価格」が正しいかどうかをじっくり考えて、正しく判断しましょう。
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