所得税や住民税は、基本的に所得額によって税額が決まります。しかし、消費税については、物を購入したときや、お金を払ってサービスを受けたときに、すべての人が同じ税率で均等に課税されます。消費税の税率は固定ですから、高額な買い物をすればするほど、納める税額も大きくなります。中古マンションを購入するとなれば、消費税はかなり大きな額になってしまうでしょう。
中古マンションと消費税の関係や、できるだけ損をせずにマンションを買うにはどうすればいいのかについてご紹介します。
中古マンションは非課税?知っておきたい消費税とマンションの関係
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
消費税がかかるもの、かからないもの
コンビニやスーパー、本屋、酒店など、どこで買い物をしても「消費税」はついて回るものです。しかし、どのようなものにも、すべて消費税が課せられるのかというと、そうではありません。
例えば、小中学校で使う教科書には消費税はかかりません。また、商品券や株券のほか、生活する賃貸住宅の家賃なども、消費税は非課税となっています。
それでは、マンションはどうなのかというと、「住宅には消費税がかかるが、土地にはかからない」ということになります。
「建物の価値がなくなっても、戸建てなら土地が残るがマンションはない」といわれることがありますが、実際、マンションの所有者は、そのマンションが立っている土地を「区分所有」することになります。そのため、マンションの価格には、土地代とマンションの建物代の両方が含まれているのです。つまり、マンションの金額のうち、住宅に関する部分には消費税がかかり、土地の部分にはかからないということになります。
ただし、これは新築マンションを購入する場合です。中古の場合、土地に消費税がかからないという点は同様ですが、物件自体に消費税がかかるかどうかは、販売している人が個人か法人かによって変わります。
中古マンションと消費税
中古マンションを売り出している売主が不動産会社の場合、中古マンションには消費税がかかることになります。一方で、売主が個人の場合は、消費税がかかりません。ただし、中古でも自分が住むためのマンションではなく、投資用のマンションの場合は消費税がかかることになります。
つまり、中古マンションと消費税の関係は、下記のようになっているということです。
土地にかかる消費税 | 物件にかかる消費税 | |
---|---|---|
不動産会社が売主の中古マンション | 非課税 | 課税 |
個人が売主の中古マンション | 非課税 | 非課税 |
投資用マンション(売主を問わず) | 非課税 | 課税 |
これだけを見ると、中古マンションを買うときは、売主が個人の物件を選ぶと消費税がかからずお得であるように思われます。しかし、実際に中古マンションを探すときは、売主が不動産会社か個人かをそれほど意識する必要はありません。なぜなら、中古マンションの価格はほとんどの場合「内税」で記されているからです。
飲食店で食事をしたとき、「思ったより会計額が高かった!」という経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。これは、メニューに書かれていた値段が内税ではなく、外税方式だったことから、実際の支払額と予想していた金額がずれてしまったせいで起こることです。
マンションの場合は内税方式で価格が表示されています。「販売価格2,800万円」と書かれた中古マンションの売主が不動産会社の場合も、個人であった場合も、買主が支払うのは「2,800万円」で同じです。
そのため、中古マンションを購入するときに、マンションの価格が課税か非課税かを、買主がそれほど強く意識する必要はないのです。
中古マンションの売買は物件価格以外にも消費税がかかる
中古マンションを購入する際、物件に対する消費税については、それほど意識する必要がないとご説明しました。しかし、「中古マンション購入時に意識しておかなければいけない消費税」も存在しています。それが、「諸経費」にかかる消費税です。これは、売主が不動産会社でも個人でも関係なく、すべての場合に関係してくるものです。
中古マンション売買時に消費税がかかるものには、仲介会社に支払う「仲介手数料」や、不動産登記をするための「司法書士報酬」などがあります。こうした諸経費は、百万円~数百万円程度かかることもあります。これに消費税がかかるとなると、少なくない金額になるため、あらかじめ意識しておく必要があるでしょう。
消費税がかからないことで起こるデメリット
個人間売買で消費税がかからない中古マンションを購入した際、注意しておきたいポイントが2つあります。
1 住宅借入金等特別控除の控除額が課税か非課税かで変わる
「住宅借入金等特別控除」は、別名「住宅ローン控除」と呼ばれるものです。簡単にいえば、10年以上の住宅ローンを組んで、自分が住むための物件を購入した場合などに適用されるものです。
住宅ローン控除が適用されると、住宅ローンの年末の借入残高の1%(2019年にマンション購入した場合。借入年度等によって具体的な率は変わる)が10年間所得税から控除され、還付を受けることができます。なお、納めた所得税額よりも住宅ローンの残高の1%が上回る場合は、住民税からも控除を受けることができます。
住宅ローン控除には、非課税限度額と呼ばれる上限が定められています。個人間売買で消費税が非課税の中古マンションを購入した場合は、上限が2,000万円、消費税がかかる中古マンションを購入した場合は、上限が4,000万円です。
元々、住宅ローンの借入金が2,000万円以下の場合は影響ありませんが、仮に年末時点での住宅ローン残高が3,000万円の場合、課税対象のマンションを買っていれば30万円の税額控除が受けられます。それに対し、非課税のマンションを買っていると税額控除額は20万円となり、受け取れる金額が10万円も違ってしまうことになります。
なお、住宅借入金等特別控除には、所得額やマンションの床面積といった適用要件があり、実際の還付額は、納めた所得税の額によって異なります。制度の変更で適用要件が変わる可能性があるので、控除を受けるときは必ず確認してください。
2 すまい給付金がもらえない
「すまい給付金」は、収入が一定額以下の人が、自分で住むための家を購入したときに受け取れるものです。収入に応じて決まる「給付基礎額」に、物件の持ち分を掛けることで求められます。
ところが、消費税が非課税の物件を購入した場合は、すまい給付金の対象外となってしまいます。そのため、給付金を受け取ることができません。
増税と中古マンション購入
日本では、3%の消費税導入後、段階的に何度も消費税の増税が行われてきました。マンションは高額な買い物ですから、消費税の影響を免れることはできません。増税の影響に巻き込まれず、いかにコストを抑えて物件を手に入れるか、考えておかなければならないでしょう。
とはいえ、高額な不動産の売買は、日本経済に及ぼす影響も非常に大きなものです。そのため、実際に増税が実行されるときは、必ず何らかの措置がとられます。実際に、消費税が5%から8%に引き上げられたときも、増税の影響によって不動産の買い控えが起こらないよう、さまざまな経過措置がとられました。具体的な経過措置の内容を見てみましょう。
・住宅の増税を延期
2014年4月に消費税が8%に引き上げられましたが、住宅に関しては引き渡しや支払いが4月以降であっても、請負工事契約を結んだのが3月以前であれば、税率5%を適用する措置がとられました。
・すまい給付金の導入
前述のすまい給付金は、そもそも8%の増税時の救済措置として制定されたものです。そのため、非課税の住宅や5%で購入された住宅は給付対象外となりました。
・住宅ローン控除の拡大
住宅ローン控除は、2014年3月までは「2,000万円を限度に10年間、1%の控除」でした。2014年4月以降に8%の税率で買った中古マンションに対しては、「4,000万円を限度に10年間、1%の控除」に減税枠が拡大されました。
消費税引き上げの経過措置を確認する
以上を見てみると、「住宅の増税延期を利用して5%で購入する」「すまい給付金や住宅ローン減税の拡大の恩恵を受ける」のどちらかを選択できる状況にあったことがわかります。
情報を十分に確かめずに買い急いだり、理解しないまま買ったりすると、「実は8%に上がってから買ったほうが得だった!」ということになる可能性もあったということです。実際に、住宅ローン控除だけでも10年間で最大200万円の違いが生まれます。
ここで重要なのが、どちらが得なのかは、いくらの物件を買うのかということや、自分自身の支払う所得税の額によって異なるという点です。一概に「どちらがいい」とは言い切れないため、自分自身で情報を集め、最適な方法を選択する必要があるでしょう。
今後も、増税時にはこのような措置がとられることが予想されます。こういった情報は、駆け込み需要を抑えないためにギリギリまで発表されないケースもありますから、結論を急がず慎重に行動するようにしましょう。
マンション売却時に増税は影響ある?
個人間のマンション売買には消費税はかかりませんが、増税によってマンション価格が全体的に底上げされる可能性はあります。そのため、増税後にマンションを売ったほうが、手元に入る金額が大きくなる可能性はあるでしょう。あまり急いで売ることを考えていないという人は、価格変動を確認してから売却を検討するのもひとつの方法です。
ただし、消費税の増税直後は、住宅を買い控える人も出てくるでしょう。ある程度急いで売りたいという場合は、多少の値動きを意識するより、増税前に売ってしまったほうがいいかもしれません。いつ売却するのが一番いいのかは、売りたい人の置かれた状況や、物件によっても異なります。まずは落ち着いて、自分が保有する物件の正確な価値を知るところからスタートしてはいかがでしょうか。
中古マンションの物件は非課税でも消費税の影響は受ける
中古マンションは、個人間売買なら消費税は非課税ですが、諸経費には課せられるため、消費税の影響を一切受けないわけではありません。また、消費税が増税された場合は、各種給付措置などが見直される可能性もあります。
自分にとっての最適な選択が何なのかは、一人ひとりの状況によって違います。情報に踊らされることなく、冷静に制度を確認して、損のない選択をしましょう。
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