知っておきたい!マンション大規模修繕の基礎知識とトラブル
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
分譲マンションに住んでいる人は、共用部分の修繕の費用として、毎月「修繕積立金」を積み立てていますが、実際に大規模修繕をするタイミングになると、「修繕費用が足りない!」という問題が起こることがあります。毎月積み立てているはずなのに、足りなくなってしまうのはなぜなのでしょうか?
ここでは、修繕費用不足問題を含めた、大規模修繕時のトラブルをご紹介します。
- 知っておきたい!マンション大規模修繕の基礎知識とトラブル
- 大規模修繕とは?
- マンションの大規模修繕はなぜ必要?
- 大規模修繕が行われないとマンションはどうなる?
- 大規模修繕はいつ行うのが適切?
- 大規模修繕が「12年周期」といわれる理由
- 大規模修繕のタイミングが遅れる理由
- 大規模修繕の内容や費用が妥当かの判断は難しい
- 言いなりにならないためにコンサルタントを起用する
- 修繕の費用が足りなくなるトラブル
- 大規模修繕費用が足りなくなる理由
- 2回目以降の大規模修繕は、特に費用不足の危険性が高い
- 修繕費用不足だけじゃない!大規模修繕中のトラブル
- 騒音トラブル
- ベランダが使えない
- 窓の外に人がいる
- マンションを売却するなら大規模修繕の前と後、どっち?
- 大規模修繕の後で売却するのがいい理由
大規模修繕とは?
大規模修繕のトラブルの前に、まずは、大規模修繕についてご説明します。
マンションは定期的に「大規模修繕」を行います。この大規模修繕とはどういったものをいうのか。また、どうして行わなければいけないのでしょうか。
マンションの大規模修繕はなぜ必要?
家は、暮らしていくうちに少しずつ不具合が出てきます。長く住み続けるためには、不具合が本格化する前にケアしていかなければならないのです。
不具合にもいろいろありますが、例えば、植木が伸びすぎたり、共用部分のライトが切れたりすることも不具合のひとつでしょう。こうした軽微なものについては、管理会社や管理人が随時、対応しています。
一方、大規模修繕というのは、外壁の塗装や配管回りのメンテナンス、屋上やバルコニーの防水工事、耐震工事といった、工事業者でなければ対応できない大規模なものを指します。 こうした修繕は、一つひとつバラバラに行うのではなく、定期的に大規模修繕として、一度に行います。
大規模修繕が行われないとマンションはどうなる?
戸建ての場合は、不具合が出てから修繕を行ったとしても、不便な思いをするのは自分たち家族だけです。しかし、マンションの場合は、住んでいる人たちの数が違いますから、ちょっとした不具合が大きな問題につながりかねません。
例えば、エレベーターが動かなくなってしまったら、マンションの上階に住んでいる人たちの生活は非常に不便なものになってしまうでしょう。また、屋上の防水機能が低下すると、水漏れの原因になりますし、建物内部に水が入り込むことで、より深刻な問題が起こる可能性もあります。
大規模修繕を行わないと、マンションは住むのに適さない環境になってしまうかもしれません。当然、そうなれば資産価値も下がります。マンションに快適に住み続けるためにも、マンション自体の資産価値を下げないためにも、大規模修繕は必要なのです。
大規模修繕はいつ行うのが適切?
大規模修繕の計画は、理事会と管理会社が打ち合わせを重ねながら進めます。「絶対にいつやらなければいけない」という決まりはありませんが、おおよそ12年周期で行われるケースが多くなっています。
ここでは、なぜ12年といわれているのかその理由と、大規模修繕のタイミングが遅れる理由についてご紹介します。
大規模修繕が「12年周期」といわれる理由
12年という数字は、国土交通省が出している「大規模修繕は12年周期」というガイドラインが基となっています。
しかし、12年が経過したからといって、必ずマンションに不具合が出てくるというわけではありません。 マンションの修繕は不具合が起きてからでは遅すぎます。大規模修繕は、計画がスタートしてから実際に着工されるまでに数年かかるものですから、ある程度、目安を決めて進めているのです。
大規模修繕のタイミングが遅れる理由
大規模修繕計画がどのように立てられているのかはマンションによって異なりますから、修繕計画に沿って進めたとしても、きっちり12年周期ではないという場合もあるでしょう。
また、12年周期で大規模修繕を行うつもりであっても、工事箇所が決まらない、修繕積立金の不足を補う方法が決まらない、大規模修繕の工事を行う会社が決まらないなど、大規模修繕のために決定すべき事項が決まらないことによって、タイミングが遅れてしまうケースもあります。
大規模修繕を進める際は、理事会で多くのことを決定する必要があります。これらの決定事項が決まらず、話し合いを重ねることになれば、それだけ工期も後ろにずれこむということです。
大規模修繕の内容や費用が妥当かの判断は難しい
大規模修繕を行う前には、どこの修繕が必要なのか、工事にかかる費用と工期はどのくらいなのかという目安を決める診断を行います。この診断は、管理会社が提携している調査会社等が行うのが一般的です。
この診断結果を受け、実際にどこの工事を行うのかを理事会で決定することになるのですが、理事会のメンバーは住民から選出されているわけですから、ほとんどが修繕工事については素人であることが多いです。そこで、工事の内容や費用が妥当かを判断できず、結局は調査会社の言いなりになってしまうケースがあります。
言いなりにならないためにコンサルタントを起用する
調査会社の言いなりにならないために、外部のコンサルタントを介入させて、工事内容や見積もりに問題がないかどうかを確認してもらうという方法があります。コンサルタントを依頼するということは、コンサルティング料が別途かかってしまうということなので、一時的なコストは増加しますが、無駄なコストがかかる可能性を減らせることや、実際に工事費用を圧縮することができれば、最終的にはコストを抑えられることになります。
このように、コンサルタントを利用するかどうかも、大規模修繕計画をスタートさせる際に理事会で決定することになります。
修繕の費用が足りなくなるトラブル
大規模修繕時に起こる問題のひとつに「修繕費用不足問題」があります。大規模修繕費用は、毎月の修繕積立金や、駐車場代などからまかなわれることになりますが、これが予算を上回ってしまうことで不足となるのです。 国土交通省の発表では、修繕工事の実施時に、修繕積立金のみで行ったマンションは全体の66.9%で、そのほかは、住民からの徴収や金融機関からの借入れなどを行っています(国土交通省「平成25年度マンション総合調査」)。
大規模修繕費用が足りなくなる理由
なぜ、大規模修繕費用の不足が起こるのでしょうか。その原因には、次のようなことが考えられます。
・駐車場の稼働率を100%で計算していたが、実際には空きが出ている
修繕積立金は、見積額からマンションの収入予測額を引いた上で決定されます。しかし、この収入予測は駐車場等の収入源が100%稼働した場合を想定しているため、実際の稼働率がそれを下回った場合、大きな不足につながる可能性があります。
・修繕計画を立てたときよりも工賃が上昇している
新築時に立てた修繕計画は、工賃の値上がりを計算せずに作られています。しかし、新築時の工賃相場がいつまでも続くわけではありません。例えば、2020年には東京五輪が決定し、建築需要が増え、人件費の増加から、建築費用は高騰しています。こうして、工賃の変動によって見積額が上がると、たちまち修繕積立金は不足してしまいます。
・修繕積立金の見積もりが低く抑えられている
2018年度の修繕積立金の平均額は、月額「自分の住む家の面積(平方メートル)×110円」程度でしたが、20年前は「自分の住む家の面積(平方メートル)×70円」でした。つまり、20年で約40円も値上がりしていることになります。 さらに、30年後は「自分の住む家の面積(平方メートル)×200円」と、2018年度と比べて2倍近くに増えると予測されています。 長期の修繕積立金の計画で、その時代の流れにしっかりと合わせて妥当な金額が設定されているでしょうか。
2回目以降の大規模修繕は、特に費用不足の危険性が高い
1回目の大規模修繕の際には、新築時に集めた「積立基金」という一時金を使うことができるので、それほど修繕費用の不足は起きにくいでしょう。ところが、2回目以降は積立基金がありませんし、建物も1回目よりも古くなっていて修繕箇所が増えることを予想すると、修繕費用が不足するリスクは大きくなってしまいます。
修繕費用不足だけじゃない!大規模修繕中のトラブル
前項では、修繕費が不足するというトラブルについて紹介しましたが、大規模修繕中には、そのほかにもさまざまなトラブルが発生する可能性があります。 以下に、大規模修繕中に起こる可能性があるトラブルをご紹介します。
騒音トラブル
工事中は、どうしても大きな音が立つことになります。夜間に働いていて、日中は家で寝ている人など、日中、自宅にいる人にとっては大きなストレスになるでしょう。
とはいえ、何時まで工事を行うか、土日に作業をするのかといったことは、工事業者を選定する時点で理事会から申し入れをすることができますので、理事会を通して希望を伝えるのもいいかもしれません。
ベランダが使えない
マンションのベランダは共用部分にあたるため、基本的に私物をたくさん置いたりすることは禁止されています。しかし、実際にはプランターを置いて植物を育てている人や、雑貨を置いている人などもいるでしょう。こういった荷物は、すべて整理しておかなければいけません。
また、足場が組まれた後はベランダに洗濯物や布団を干すこともできなくなります。洗濯乾燥機を利用したり、室内干しをしたりすることになりますが、普段外に洗濯物を干している人にとっては、大きなストレスの原因になるかもしれません。
なるべく快適に暮らせるよう、事前にコインランドリーの場所を調べておくなど、対処法を考えておきましょう。
窓の外に人がいる
足場が組まれた後は、窓のすぐ外を工事業者が行き来することになります。なんとなく落ち着かない気持ちになりますし、プライバシーが侵害されていると感じる人もいるでしょう。そもそも、自分の家のすぐ外に人がいること自体がショックであるという人もいるかもしれません。
このような問題を軽減させるためにも、大規模修繕中はカーテンを開けないなどの工夫が必要です。
マンションを売却するなら大規模修繕の前と後、どっち?
マンションの大規模修繕は、費用面から考えても、工事中のストレスという問題から考えても、非常に大きな問題です。ここまでご紹介してきたようなトラブルが起きる可能性も十分考えられます。
ですから、「いつか住み替えたい」と考えている人の中には、この大規模修繕のタイミングで住み替える人も少なくありません。
しかし、マンションの売却を考えるのであれば、大規模修繕の後のほうが、おすすめのタイミングとなります。
大規模修繕の後で売却するのがいい理由
大規模修繕の後は、2回目の修繕費用が不足する可能性があることから、修繕積立金が上がるケースが多くなっています。ですから、大規模修繕の前に売却して、修繕積立金が増えることから逃れようと、売却を望む人もいます。
しかし、買い手側のことを考えると、大規模修繕があるとわかれば、工事期間中にストレスを感じることは容易に予測され、なかなか買い手は見つからないでしょう。
一方で、大規模修繕直後の物件は、メンテナンスを終えた後の状態のいいマンションに住むことができるということで、買い手が見つかりやすく、好条件で売却できる可能性も高まるのです。
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