2011年の東日本大震災や、近年頻発している自然災害をきっかけに、地域で災害に備える体制づくりの重要性が見直されるようになりました。地縁の希薄化や地域ぐるみの活動の減少が危惧される中、昔ながらの「近所付き合い」に通じる「コミュニティ」との関わり方が注目を集めています。
マンションにも戸建てにも存在するコミュニティとの上手な付き合い方
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
ここでは、マンションと一戸建てで異なるコミュニティの在り方を踏まえて、上手なコミュニティとの付き合い方について考えていきます。
コミュニティとは?
コミュニティとは、共通の目的意識や趣味の元に形成される集団のことです。
ここでは、地域住民が生活している場所、およびその交流が行われている地域社会、また、そこで交流する集団を指す「地域コミュニティ」、いわば昔ながらの「ご近所付き合い」と同じ意味合いで使っています。
コミュニティには、大きく2つの種類があります。
オフィシャルなコミュニティ
マンションの管理組合や地域の自治会など、人々の暮らしをより良くするために存在するのがオフィシャルなコミュニティです。基本的には、コミュニティを牽引する役割を担うリーダーが存在します。
自主的なコミュニティ
同じの趣味を持つ人の集まりなど、共通項のある人が集うことによって自然発生的に生まれる、自主的なコミュニティもあります。「子供の生まれ月が同じママ」「◯◯幼稚園の親」といった具合に、子供を介して生まれるコミュニティも多くあります。
マンションと戸建てのコミュニティの違い
新しい住まいを購入するにあたって、「面倒なコミュニティに参加しなくて済むのはどちらか」という判断基準で、マンションと戸建てを比べる人も少なくありません。特に都市部には、災害への備えなど、最低限の関わりは持っても、あまり地域と深く関わらない暮らしを望む人も多くいます。
マンションのコミュニティと、戸建てのコミュニティとの違いについて見ていきましょう。
マンションのコミュニティ
あらゆる世代、かつさまざまな家族構成の人が同じ建物の中に住むマンションには、「価値観の違う人たちが1ヵ所に暮らすので、付き合い方が難しそう」「住民同士の付き合いがわずらわしいのではないか」といったイメージを持つ人もいます。
分譲マンションの区分所有者が強制的に参加しなければならないグループは、マンションの管理組合だけで、比較的ゆるやかなつながりであることがほとんどです。マンションの理事は、1年任期の輪番制というところが多いので、マンションを統率するリーダーが固定化することもありません。
マンションで生活している住民同士の連帯感や帰属意識によって、全体がなんとなく統率されているのがマンションのコミュニティの特徴です。
一方で、最近は「あえてマンション内にコミュニティを作ろう」という動きも出てきています。大規模マンションでは、同じマンションに住んでいながら、ほとんど顔を合わせない住民同士も多くいます。お互いの顔と名前を知ることで、安心して暮らしたいというニーズに応えるため、デベロッパーや管理組合が主導し、外部の事業者を入れるなどして定期的にイベントを開催し、意図的にコミュニティを生み出す努力をしているマンションもあります。
戸建てのコミュニティ
戸建ては、マンションに比べて住宅の個別性が保たれているため、コミュニティのしがらみが少ないイメージがあります。地域によっては、常にかけずに近所の人が自由に出入りするといった昔ながらの風習が残っている地域もありますが、都心ではほとんどないでしょう。地域とのつながりも、自治会や町内会への加入、およびイベントへの参加要請がある程度です。
しかし、戸建てはマンションのように「集合体の中の一部」として存在を希薄化することができないため、そこに存在している、もしくは新たに作られていくコミュニティの在り方によっては、非常に濃いつながりができる可能性があります。特に、土地が少ない都心では、狭いエリアに一度に住宅が建つことがあります。同時期に引っ越してきた住民同士の連帯感から付き合いが生まれやすく、かつ抜けにくい状況に陥りがちです。
どちらかといえば、戸建てのほうがマンションより濃く、深い関係を求められる傾向があるといえるでしょう。
コミュニティに参加するメリット
意図的にコミュニティを作ったり、コミュニティに参加したりすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。一般的には、次の3つが考えられます。
犯罪の抑止効果
近所付き合いが活発で声をかけ合う風土が根付いている地域は、侵入犯罪が起きにくいことがわかっています。
犯罪者が最も嫌うのは、地域の連帯感と信頼関係です。2003年に都市防犯研究センターが発表した「JUSRIリポート別冊第17号」によると、侵入犯罪者の6割以上が「侵入しようとしたところ、声をかけられたので犯行をあきらめた」とあります。
高齢者の見守り
高齢化が進む中、高齢者が安心して地域で暮らし続けるために、町ぐるみで見守る環境づくりが求められています。隣近所でお互いの顔がわかる関係を築き、「あの家には認知症のおじいちゃんがいる」「足の不自由なおばあちゃんが一人暮らししている」といった家族構成とその状況を把握しておけば、不審な状況を見かけたり、災害が起こったりしたときに迷わず声をかけ、速やかに助け合うことができます。
育児の情報共有
同年代の子供を育てている親同士のコミュニティがあると、子育てに必要な情報を共有できるというメリットがあります。子供が小さいうちは児童館や保育園、小学校に上がったら塾や中学受験など、子供の成長に合わせた情報のほか、地域の不審者情報などもすぐに手に入ります。
コミュニティに参加するデメリット
メリットがある一方、コミュニティの参加にはデメリットもあります。デメリットとして考えられるのは次の3つです。
ストレスになる場合がある
顔の見える関係という安心感は、お互いの家族構成や生活環境を知られているという、わずらわしさと紙一重です。関係が深まれば深まるほど、詮索されることも増えるでしょう。
人付き合いがそれほど得意ではない人や、程良い距離感を保って暮らしたいという人にとっては、コミュニティがストレスになりかねません。
プライベートが保てない
「子育てに協力し合う、家族同然の付き合い」といったコミュニティに一度入ってしまうと、なかなか抜け出すのは難しいでしょう。子供を預け合ったり、何かある度に集まって食事をしたりという関係を築く場合は、お互いのプライベートをさらけ出す必要があります。
コミュニティを自由に抜けられない
住まいという、簡単には変更できない環境の上に成り立っているコミュニティには、「自分には合わないから距離を置きたい」「別のコミュニティに入りたい」と思っても、関係を切りにくいという問題があります。
毎日のように顔を合わせる状況下では、少しずつフェイドアウトすることも難しく、結局はストレスを感じながらも付き合い続けるしかなくなってしまいます。
コミュニティで選ぶなら、戸建て?マンション?
前述したように、戸建てとマンションでは、前者のほうが関係は密接になりやすく、後者のほうが適度な距離感を保ちやすいという特徴があります。より気軽に、簡単な近所付き合いをしたい方は、マンションが適しているといえるでしょう。
しかし、マンションであっても戸建てであっても、それぞれの性格や志向に合ったベストなコミュニティを模索することは可能です。
例えばマンション住まいで、「そこまで濃い付き合いは望まない、近くに顔見知りがいる程度の安心感が欲しい」という場合は、マンションが定期的に開催しているイベントや地域のお祭り、セミナーなどに参加して、「会えば挨拶して言葉を交わす」程度の知り合いを作ることから始めるといいでしょう。
密接で気の合うコミュニティづくりを重視したいという場合は、頻繁にイベントを開催したり、住民同士が集えるラウンジを設置したりと、コミュニケーションの場を提供してくれているマンションを選ぶのも手です。
また、夫婦共働きで子供のいないDINKSなのか、夫婦と子供で構成されるファミリーなのか、高齢の夫婦だけで暮らしているのかといったライフステージによっても、ベストなコミュニティの在り方は違ってきます。まずは、自分たちがどんな風に暮らしたいのか、コミュニティに対して何を、どこまで求めているのかをじっくり考えた上で、住まいを選びましょう。
コミュニティとの付き合い方
価値観が多様化する今、地域やマンションなど、「たまたまひとつの共同体に住んでいる」という共通項だけでコミュニティを形成するのは非常に困難です。「暮らしをより良いものにする」「住みやすさを高める」という前向きな目的を持ったコミュニティであっても、強制されていると少しでも感じた時点で、参加を拒否する人も少なくありません。
長く、気持ち良く暮らし続けるためには、コミュニティとの関わり方を考える際に、次に挙げる5つの事項を意識することをおすすめします。
<コミュニティと関わる上での注意事項>
・自分のライフステージに合った付き合いであること
・つかず離れず、一定の距離感を保って程良く付き合えること
・自分自身も家族も無理をせず、楽にふるまえること
・参加を強制されないこと
・異なる価値観を認め合える関係であること
コミュニティに対する考え方は人それぞれですが、必要以上にプライバシーに踏み込むことはせず、顔を見たら挨拶し合うという当たり前の付き合いを大切にしていくことが、時代に合ったコミュニティとの付き合い方だといえるでしょう。
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