低金利や将来の年金への不安から資産運用を始める人が増えている中、株式や投資信託、FXなどと並んで注目されているのが不動産投資です。不動産投資は、家賃収入を得るインカムゲインと、売却したときのキャピタルゲインに期待して、不動を購入する投資方法です。その中でも、購入金額が低めの「ワンルームマンション投資」は、初心者でも始めやすいとして人気を集めています。
一方で、「ワンルームマンション投資は失敗する人が多い」「儲からない」といったように、ワンルームマンション投資のリスクを指摘する声も少なくありません。
ここでは、ワンルームマンション投資で失敗しないための考え方や注意点、成功するためのポイントについてご紹介します。
目次
ワンルームマンション投資とは?
ワンルームマンション投資とは、賃貸することによって得られる家賃収入、および購入金額以上の値段で売却したときの売却益に期待して、単身者向けのワンルームマンションを購入する不動産投資のひとつです。
投資は、バブル期は値上がりを期待した売却目的の短期的なものが中心でしたが、近年は安定した家賃収入に期待する長期的な投資が主流となっています。その中でもワンルームマンション投資は、ファミリータイプのマンションに比べて購入金額が安く、初心者向けの投資であるという触れ込みで、一般の会社員のあいだにも広まりました。
ワンルームマンション投資が「失敗する」といわれる理由
ワンルームマンション投資は、「誰でも簡単に始められる」「安定したリターンが見込める」といったメリットが注目される一方、「リスクが大きく失敗しやすい」「儲からない」といった評判も少なくありません。
こうしたデメリットが注目されるようになった背景には、大きく2つの理由があります。
サブリースの社会問題化
不動産会社が持ち主から賃貸物件を一括で借り上げ、第三者となる入居者に転貸する「サブリース」は、入居者が決まらなくても不動産会社が一定のリース料を支払う、家賃保証システムです。このシステムは、空き室リスクを恐れて不動産投資を敬遠していた多くの人の背中を押しました。
ところが、サブリースの現実と貸主の認識のあいだには大きな隔たりがあり、トラブルになる事例が頻発しました。問題になったのは、以下の3点です。
・物件価値の低下や相場の変動によって「賃料減額請求」が出され、賃料の見直しが入る
・サブリース会社が倒産し、家賃の未払いが起きる
・借地借家法によって借主であるサブリース会社が保護されるため、貸主側から契約を解除するのは簡単ではない
2018年には、家賃保証を条件に多くのオーナーを獲得していたサブリース会社が破綻し、物件オーナーへの賃料が未払いになる事件がありました。金融機関から多額の融資を受けて物件を購入していたオーナーたちが、訴訟に踏み切る大きなトラブルになったのです。これをきっかけにサブリースが社会問題化し、「家賃保証は不確かで、マンション投資は危険」という風潮が生まれました。
身の丈に合わない投資をする人の増加
「ワンルームマンション投資は簡単」「サブリースで空き家の不安も解消」といった情報が広まり、ワンルームマンション投資の裾野は広がりました。それに伴って、金融機関の投資用ローンを利用して、元手ゼロでマンションを購入するなど、身の丈を超えた投資をする人も増えたのです。
こうした投資家が、空き家リスクや家賃保証の落とし穴にはまって大きな損失を出し、結果的にワンルームマンション投資の評判を低下させることになったのです。
ワンルームマンション投資で失敗しないためのコツ
ワンルームマンション投資での失敗を防ぐには、以下の2点に注意することが重要です。
自己資金で賄えない投資はしない
「わずかな資金でも始められる」とうたう金融機関のローンプランは、一見すると自己資金が少なくても資産運用をしたい人の味方のようですが、あまりおすすめできません。なぜなら、融資を受けるということは、当然ながら融資してもらった分を返済する義務があるということで、空き室や家賃の滞納が発生したときのリスクが非常に大きくなるからです。
自己資金でまかなえない投資は、身の丈を超えた投資であるという意識を持ちましょう。投資をするにあたって重要なのは、「自力を知る」ということです。
同じ理由から、家賃保証に期待しすぎるのも禁物です。家賃保証を利用する場合、家賃を決定するのはサブリース会社です。家賃保証をする期間を提示されると、「この期間、ずっと一定の家賃が入ってくる」と思ってしまいがちです。しかし、あくまでも保証されるのは「家賃の支払い」であり、最初に設定された家賃額ではありません。空き室が続いたり、相場が下落したりすれば減額されることもあるので、資金に余裕がないと一気に運用が難しくなってしまいます。
また、敷金や礼金はサブリース会社の取り分であるにもかかわらず、経年劣化した建物のメンテナンスは貸主の責任になることも、計算に入れておく必要があるでしょう。数年ごととはいえ、まとまった費用負担は自己資金に乏しい貸主の資産を、着実に削ることになります。
大きなリターンを期待しすぎない
ワンルームマンション投資の最大のメリットは、節税効果です。
マンションは固定資産なので、税法で定められた耐用年数にわたって減価償却費を経費として計上でき、利益額を抑えて節税効果を上げることができます。
また、減価償却費を含めた経費が家賃収入を上回って赤字になった場合には、確定申告によって給料から天引きされている所得税を、赤字の金額分だけ取り戻すことができます。
ただし、どちらも驚くほど多額の税金が戻ってきたり、支払う税金の額が一気に減額されたりするものではありませんので、「大きく儲けたい」と考えて投資を始める人には向きません。
ワンルームマンション投資に向いている人とは?
ワンルームマンション投資と、株やFXといった投資との最大の違いは、マンションという物が残るということです。もちろん、自己資金で投資をスタートしていることが前提ですが、たとえ空き室が続いても、最終的には物を売却するという手段があるので、資産がゼロになることはありません。いわば、他人にローンを払ってもらって、資産を手に入れるという感覚です。
つまり、ワンルームマンション投資に向いているのは、大きなリターンを期待しすぎず、「損をしないための資産運用」「余計なお金を払わず、うまく資産運用して節税効果を上げたい」という意識で投資できる人です。
もし、マンション投資で儲けたいなら、投資対象のマンションをファミリータイプにするか、ワンルームマンションを複数所有する方法がいいでしょう。投資先を1つのワンルームマンションにしぼる場合は、「金融機関に預けるよりは、ワンルームマンションに投資したほうが手堅く資産を回せる」という考え方ができる人でないと、失敗する確率が高くなってしまいます。
投資先選びのポイントは“貸せる部屋”
不動産投資においてポイントになるのが、“貸せる部屋”かどうかです。貸せる部屋とは、需要が途切れず、長期にわたって安定した稼働が見込める部屋のことです。
貸せる部屋を構成する要素には、物件そのものの魅力や家賃などがありますが、最も重要な条件は「エリア」です。分譲マンションや一戸建ての持ち家なら、多少勤務先から離れても、子供にとって良い環境であることや、広い土地を確保できることを優先してエリアを選ぶ場合がありますが、賃貸物件では何を置いても「利便性」です。
たとえ最新の設備をそろえた物件でも、人が集まりにくいエリアでは需要が見込めません。反対に、成長性がある人気のエリアであれば、目立った特徴がない物件でも、十分に収益を確保することができます。
需要が見込めるエリアの見極め方
エリアの見極め方には、2つポイントがあります。
ひとつは、港区、中央区、渋谷区、千代田区など、東京都の中心部であること。都心の主要エリアは賃貸の需要が高く、入居者が途切れない上、単身者の住まいとしてだけでなく、会社の事務所やサブオフィスとしての利用も見込めるからです。
もうひとつは、駅近であること。駅から徒歩圏内であることは、賃貸に入居を希望する人が重視するポイントとなります。投資先として激戦区でもありますが、できれば都心部を走る路線のターミナル駅であることが望ましいでしょう。
また、“貸せる部屋”であるということは、資産価値が下がりにくいということでもあります。不動産投資のリターンには、貸すことで家賃収入を得るインカムゲインのほか、売却することによって得られるキャピタルゲインがあります。立地条件から、確かな収益性と安定性が得られる物件であれば、将来にわたって資産価値が下がりにくいため、売却益にも期待できます。賃貸の家賃相場はほぼ変わらないことを考えても、立地を吟味して物件を選ぶことは必須だといえるでしょう。
ポイントを見極めて、ワンルームマンション投資を成功させよう
ワンルームマンション投資は、余計なお金を払わず、うまく資産運用して節税効果を上げたいという人にとっては、手堅い確実な投資です。ただし、大きなリターンを期待しすぎてしまったり、自己資金なしで、全額ローンで投資を始めたりすると、後々自分の首をしめることになりかねません。
失敗を防ぐポイントは、自己資金をしっかり準備して、身の丈を超えた投資はしないこと。そして、エリアを十分チェックして、“貸せる部屋”を選ぶことです。
ワンルームマンション投資を始める前に、自分に合った投資方法なのか、また、資金繰りに無理がないかを十分確認するようにしましょう。