近年、都心部のマンションで目立つようになった「内廊下」。その名のとおり、共用廊下が建物の内側に取り込まれている、いわばホテルのような作りの廊下のことです。これまで一般的だった「外廊下」に比べて高級感が増すことから、最近のマンションで採用されるケースが増えてきました。
今回は、内廊下のさまざまなメリットと注意点のほか、外廊下との違いなどについてご紹介します。
内廊下は何が良い?内廊下のメリットと外廊下との違いについて
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- 内廊下・外廊下の違いとは?
- 内廊下
- 外廊下
- 内廊下が人気なのはなぜ?
- 季節を問わず快適な環境を保つことができる
- プライバシーが守られる
- 高いセキュリティ性
- 高級感がある
- 高層階でも落下の心配がない
- 外の音が響きにくい
- 廊下を歩く足音が響かない
- きれいな状態を長く保つことができる
- 内廊下の注意点
- 外気での換気がしにくく、においがこもりやすい
- 廊下側に窓が作れないため、採光できる場所が少ない
- 仕様が豪華な分、管理にコストがかかる
- 規約がきびしい場合がある
- 外廊下のメリット
- 風通しが良い
- 室内が明るい
- 外廊下のデメリット
- 天候の影響を受けやすい
- 足音や人の気配が気になる
- 外廊下がなくならない理由
- 内廊下のメリットをより実感できる住み方とは?
内廊下・外廊下の違いとは?
従来のアパートやマンションでは、各戸へ続く廊下は建物の外側にあり、マンションの外や中庭などから見える構造が一般的でした。内廊下式が増えてきたのは、1997年の法改正によって、マンションやアパートの共用廊下と階段部分の床面積が、建築延床面積に算入されなくなってからだといわれています。
建物は、所定の容積率以下で建てることが義務付けられています。法改正前、内廊下は建築延床面積に含まれていたため、内廊下にすると容積率を圧迫し、大きな建物は建てられませんでした。その点、外廊下や外階段は建築延床面積に含まれていなかったため、よく採用されていたのです。
法改正後は、外廊下でも内廊下でも建築延床面積に算入されず、条件は同じとなったことで、マンションのデザインの幅が広がりました。
マンションを購入する際、間取りや共用施設、ソフトサービスなどは気にしても、廊下のことはまったく考えていなかったという人は少なくありません。しかし、廊下のスタイルは住み心地に大きく影響する部分です。この機会に、内廊下・外廊下の違いを押さえておきましょう。
内廊下
内廊下は、共用廊下が外部に露出せず、建物の中にあるタイプ。エントランスからエレベーター、各戸の玄関に至るまで、一切外気にふれることなく行き来することができます。高級感のあるホテルのような作りといえば、イメージしやすいでしょう。実際、内廊下をアピールポイントとして売り出すマンションでは、「ホテルライクな」「ホテルで暮らしているような」といったキャッチコピーが多く使われています。
外廊下
外廊下は、共用廊下が外部に露出していて、建物の外側にあるタイプです。エントランスを抜けると、外気にふれる廊下が、エレベーターおよび各戸の玄関まで続いています。現在も多くのマンションが採用している、ごく一般的な廊下の方式です。
内廊下が人気なのはなぜ?
最近は、外廊下ではなく内廊下を採用するマンションが増えています。その理由は、「ほとんどデメリットがないから」といわれています。内廊下にはどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
季節を問わず快適な環境を保つことができる
内廊下は、玄関を開けても室内と変わらないので、エントランスを出るまで外気にさらされることがありません。冷暖房で気温も一定に保たれていることが多く、四季を問わず、マンション内にいるあいだは快適に過ごすことができます。
プライバシーが守られる
内廊下は、一度エントランスに入ってしまえば、マンションの外側から見られることは一切ありません。マンションの住人以外には住んでいる部屋がわからないため、プライバシーが保たれます。
高いセキュリティ性
内廊下の場合、エントランスを通らない限り、各住戸に行くことができないため、外部からの侵入経路はバルコニーや窓に限られます。高いセキュリティ性は、長く住み続ける上での大きな安心材料です。
高級感がある
ラグジュアリーな非日常感は、内廊下の大きな特徴です。周囲からまったく見えないという環境も、マンション住人だけの共用施設という特別感を高めます。「せっかくタワーマンションに住むなら、マンション全体に高級感がほしい」というニーズに応えてくれます。
高層階でも落下の心配がない
マンションの高層階で外廊下の場合、廊下からの落下のリスクがゼロではありません。特に小さな子供がいる家庭では、子供を一人で玄関から出さないようにする、エントランスから部屋まで一人では向かわせないようにするなど、敷地内でも目を離せません。その点、内廊下なら、短時間であれば、玄関の外で待たせておくことも可能でしょう。目を配るところがひとつ減り、子育ての負担軽減にもつながります。
外の音が響きにくい
内廊下のマンションでは、エントランスとバルコニー、窓以外に外と接する部分がないので、外廊下に比べて外部の騒音が響きにくくなります。
工事の音や公園から聞こえてくる歓声などを、しっかりシャットアウトしてくれます。
廊下を歩く足音が響かない
内廊下は、カーペット敷きになっていることが多いので、足音がほとんど響きません。帰宅が夜遅い人や、やんちゃざかりの子供を育てている人など、普段ご近所の迷惑にならないようにと緊張しながら生活している人にとって、メリットとなるでしょう。静かに生活したい人にとっても、廊下の足音が聞こえないのはメリットです。
きれいな状態を長く保つことができる
内廊下の場合、廊下に砂ぼこりが溜まったり、玄関ドアや郵便受けなどが日焼けして変色したりする心配がありません。経年劣化を遅らせ、玄関前を長くきれいな状態に保つことができます。
内廊下の注意点
メリットが多い内廊下ですが、期待しすぎは禁物です。「デメリットがない」といわれることもありますが、知っておきたいことはいくつかあります。
内廊下のマンションを購入する前に、知っておくべき注意点を確認しておきましょう。
外気での換気がしにくく、においがこもりやすい
外廊下と違って、内廊下は玄関ドアとバルコニーを開け放して外気を通し、室内全体の空気を入れ替えることができません。サーキュレーターや空調を上手に使って、空気を循環させる必要があります。 また、カーペット敷きの内廊下は靴や香水、ペットなどのにおいがしみつきやすく、気密性が高い分、住人の生活臭もこもる傾向があります。内廊下の物件の購入を検討する際は、空調設備と管理体制をしっかり確認しましょう。
廊下側に窓が作れないため、採光できる場所が少ない
内廊下のマンションは、窓を作れるのが外周部のみなので、窓のない部屋ができやすく、全体の採光性という点では外廊下の物件に劣る場合があります。最近では、間取りを工夫して各部屋に窓を作り、採光性を確保している物件も増えていますが、気になる場合は昼と夜、時間を変えて室内をチェックしましょう。
仕様が豪華な分、管理にコストがかかる
内廊下は光が入らないため、昼間でも照明をつけておかなければならず、光熱費がかさみます。また、空調費やカーペットの清掃代も必要です。外廊下も、経年劣化による防水塗装の張り替え費用などはかかりますが、ランニングコストとしては内廊下のほうが上だといっていいでしょう。高級感を長く維持するには、それなりのコストがかかるという理解が必要です。
規約がきびしい場合がある
内廊下マンションの場合、玄関ドアの長時間にわたる開放を禁じている場合があります。食材宅配サービスで、数時間だけ物を置くのも禁止しているマンションも多いようです。一戸建てや外廊下のマンションからの住み替えの場合は、若干窮屈に感じるかもしれません。規約をしっかり確認して、ご近所トラブルやクレームにならないよう気を付けましょう。
外廊下のメリット
人気の高まる内廊下のマンションですが、これまで主流だった外廊下には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
風通しが良い
外廊下は、玄関を開ければすぐに外気にふれられるので、部屋に空気がこもりにくい構造です。バルコニーの窓と玄関を開けて、部屋全体に風を通すこともできます。廊下を歩いていて生活臭がもれてくることはあっても、よどんで溜まることはなく、すぐに消えるのは外廊下の利点です。
室内が明るい
外廊下の玄関側にある部屋には窓が設置されていることが多いので、採光性が高く、どの部屋にも自然光が差し込みます。夕方や冬でも明るく、電気代の節約にもつながるでしょう。
外廊下のデメリット
一方、外廊下には次のようなデメリットが挙げられます。
天候の影響を受けやすい
外廊下は、天候の影響を受けやすいというデメリットがあります。玄関を開けてすぐに暑さ寒さを感じ、強い雨や雪なども直撃します。落ち葉やゴミなどが風にのって舞い込んで、廊下を汚すことがありますし、災害級の台風やゲリラ豪雨が来ると、玄関にも影響を及ぼしかねないため、対策が必要です。
足音や人の気配が気になる
外廊下は、コンクリートの上に防水塗装をしているタイプがほとんどなので、足音が響きます。夜遅い時間の靴音や、子供が走り回る足音はトラブルの元。
玄関に近い部屋では外を行き来する人の気配が気になるのも、外廊下のウィークポイントのひとつです。
外廊下がなくならない理由
注意点はあるものの、メリットのほうが多い内廊下の人気が高まる中、依然として外廊下を採用するマンションが多いのはなぜでしょうか?理由はさまざまですが、一番大きいのは建築コストの問題と考えられます。
建物の一部である内廊下は、どうしても建設費が高くなります。内廊下のマンションが住みやすく、人気があることはわかっていても、コストを考えると外廊下にせざるをえないというケースは少なくありません。エリアごとの分譲平均価格に合わせるために、外廊下にしてコストカットを図っている場合が考えられるでしょう。
内廊下のメリットをより実感できる住み方とは?
最近では、「ホテルライクでゴージャスな雰囲気」に魅力を感じて、住居を決めるポイントとして内廊下を挙げる人も増えてきました。
しかし、ホテルにランクがあるように、内廊下のマンションのレベルもさまざまです。管理が行き届いていない内廊下は、高級ホテルというよりビジネスホテルのように見えることも…。また、夜中に大騒ぎして廊下を通ったり、セキュリティ性が高いからといって子供を自由に走り回らせたりする人が多ければ、内廊下の良さは半減してしまうでしょう。
「ホテルライク」が売り文句になる内廊下のマンションは、その分、ホテルのような暮らしを保つために努力しなければなりません。例えば、住民全員で共有スペースでの行動を自制し、マンションの雰囲気を作っていく必要があるなどです。一人ひとりが「マンションでホテルライクに暮らす」という意識を持つことで、内廊下のメリットをより実感できるでしょう。
内廊下か外廊下かで迷ったら、メリット・デメリット以上に、「どう暮らしていきたいか」を考えて選ぶのがポイントです。
注目のエリア
※実際の流通価格を保証するものではありません。予めご了承ください。
人気の記事
- マンションバリューマガジン編集部
PICKUP
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー