【専門家インタビュー】マンションの買い替えに最適な時期は?

子供ができたから広いマンションに住み替えたい、子供も巣立ったし夫婦で小さなマンションに引っ越したいなど、ライフステージに合わせて必要な間取りや生活スタイルは変わります。そして、ライフステージの変化に合わせてマンションの買い替えをする人は少なくありません。しかし、マンションは大きな買い物です。せっかくであれば安く買える時期などを見極めた上で、上手に買い替えをしたいと誰もが思うものでしょう。   そこで、現在マンションの買い替えを考えている人のために、不動産業者の選び方や買い替えの方法などについて、不動産コンサルタントの長嶋修さんに聞きました。

マンションの買い替え時期とは?

――この先、買い替えにベストな時期があれば教えてください?

単純に売却だけを考えるのであれば、高く売れる時期がベストです。高く売れる時期を予測するのであれば、日経平均株価は無視できません。
こちらは、日経平均株価と都心3区にある中古マンションの成約平米単価のグラフとなりますが、中古マンションの価値はほとんど株価と同じように推移しているのがわかると思います。

■「日経平均株価」と「都心3区中古マンションの成約㎡単価」

※東日本不動産流通機構/東京証券取引所

ちなみに、(2019年2月)現在の株価は21,000円くらいの水準になっていますから、今こそ高く売れるタイミングといっていいでしょう。

都心にマンションを所有している人は、株を運用している人が多いんです。そのため、株価の推移に連動して不動産にも影響が出るのです。この都心の中古マンションの価格変動を受け、日本の不動産価格は動いていきます。
また、新築マンションは、供給価格をデベロッパーが供給コストをコントロールしているので、株価の変動から遅れて変動する傾向があります。

――都心を中心にどのように広がっていくのでしょうか?

皇居を中心に考えたとき、「の」の字を描いて変化していきます。東京都内であれば、港区や品川区の城南エリア、新宿区や世田谷区などの城西エリア、文京区や豊島区などの城北エリア、中央区や台東区などの城東エリアの順で価格が変動します。さらに、関東エリアに「の」の字を広げると、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県という順になります。

――売却ではなく買い替えを考えても今がベストですか?

都心のマンションから都心のマンションに買い替えるのであれば、株価が上昇傾向にあれば、高く売って高く買う状況ですし、反対に、株価の状況が下降傾向にあれば、安く手放すことになりますが、安く買うことができるので、時期はあまり関係ないですね。
しかし、リーマンショック以降に価値が上がったのはマンションだけなので、戸建ての価値は下がっているんです(2019年2月現在)。そのため、戸建てからマンションに買い替えるのは難しいかもしれませんが、都心のマンションを売って郊外の戸建てを買うのであれば、今は高く売って安く買える最高の時期となります。

マンションの買い替えの方法

――買い替えは「売り先行」「買い先行」「同時進行」のどれが一番いいのでしょうか?

同時進行できればそれが一番スムーズですが、よっぽど魅力的な物件を持っている場合でなければ難しいといえますね。確かに、今売れたらこの物件を買おうと目星をつけておくのはいいと思いますし、そうやって買い替える人もいますが、皆がそうして買い替えられているかというと、なかなか難しいでしょう。
一般的には、ローンが組めないなどの問題が出てくる可能性があるので、売りを確定させた後に住み替え先を購入する「売り先行」が基本です。先に買ってしまって自宅が売れないとなると、困ってしまいますよね。買い替えのときには、「売り方」と「買い方」どちらにも注力しないといけないので、余裕を持って計画的に進めることが大切です。
不動産は運や縁もあるので、決まる人はトントンと決まることもあります。普段の行いも影響するんじゃないですかね(笑)。

――住み替えをする場合、どのくらいの期間がかかるものですか?

賃貸物件の契約であれば、だいたい探し始めてから住み始めるまで2~3ヵ月ほどだと思いますが、住み替えであれば半年は見ておいたほうがいいと思います。
物件を売るときは、「査定」「広告を出す」「内見(物件の案内をする)」「契約」「引き渡し」という流れになりますが、これはスムーズに進んでも最低3ヵ月と見たほうがいいでしょう。

そのため、まだ自宅が売れていない段階で住み替え先の物件が見つかった場合は、新しい家の引き渡し日は半年先などに設定しておくと安心です。契約したら早く住まなくてはいけないということはないので、売主と合意できれば、半年でも1年先でも引き渡し日は設定できます。

――住み替え前には、仮住まいを用意したほうがいいですか?

住み替え先が見つからない可能性はゼロではないので、そうなってもいいように賃貸の仮住まい先やそこにかかる資金を用意しておくなど、準備しておく必要はありますね。

――2重ローンになったときはどうすればいいのでしょうか

ここ10年から20年以内に買ったマンションから住み替えるのであれば、マンションの価値自体が上がっているので、売却損が出る人はほとんどいないと思います。リーマンショックやアベノミクス以降にマンションを購入した人は、1.2倍から1.5倍くらいにはなっているんじゃないでしょうか。
もし、2重ローンになった場合でも、住み替え先の住宅ローンにプラスして組むことなどができるので安心してください。ただし、一番いいのは売却した金額でローンを支払い切る。できれば、新しい家の頭金が出せるといいですよね。

スムーズに買い替えるためのコツ

――よりスムーズに買い替えるときのコツはありますか?

売却の際は、最初のステップとして物件を「査定」に出しますが、そのときのコツとしては、毛色の違う仲介業者3社に出すことでしょうか。
例えば、1つ目は大手の不動産仲介業者、2つ目は地元に強い不動産仲介業者、3つ目はネット運営を中心としている不動産仲介業者といったところです。
大手のメリットは、契約など必要な書類も不足なくきちんとしていること。また、大きな失敗をすることもないので安心です。地元に強い不動産仲介業者であれば、地域のネットワークやお客を多く持っていることがメリットです。ただ、契約書など応対品質にはむらが出てしまう可能性があるので注意しなければなりません。ちなみに、地元に強い不動産仲介業者は、不動産情報サイトなどで該当の駅周辺の物件を検索したときに、多く名前が出てくる会社にするといいでしょう。
ネット系の不動産仲介業者はアパートの一室などで運営していることが多く、運営コストが安い分、仲介手数料が安いというメリットがあります。

――見積もり結果を見てどのように選べばいいのですか?

まずは、見積もりの価格があまりにも高い不動産仲介業者はやめておいたほうがいいでしょう。
基本的に、査定は市場価格の相場を基に出すものなので、そこまで大きく乖離が生まれることはありません。5%から10%の価格差であれば問題ないですが、それ以上に差がある場合はお客をつけるために高く見積もっている可能性があります。こういう仲介業者に依頼すると、売れなかったり、売るまでに理由をいろいろつけて金額を下げていったりといったことが起こりえます。

仲介業者を選ぶにあたって大切なのは、見積もりの価格よりもどのように売っていくかの販売戦略を提案してくれるかどうかです。あまり細かく販売戦略を立ててくれる業者は少ないかもしれませんが、似ている条件のマンションと比べてどんなメリットやデメリットがあるかを把握したり、周りの価格水準と比較したときの打ち出し方を提案したり、売りに出すタイミングなどをあらかじめ説明してくれるかどうかで、信頼できる不動産仲介業者かどうかがわかります。
スムーズに買い替えるためには、まずはスムーズに売らなければなりませんので、不動産仲介業者選びはとても大切です。

売却や購入で失敗しないためには?

――買い替え時に失敗しないために知っておくべきことはありますか?

不動産仲介業者に任せっきりにせずに、自分で物件の相場を理解しておくことが大切です。同じ駅や周辺の物件の相場をチェックしておいて、自分の物件の価値がどのくらいの価値があるのかを把握しておくことです。比較の際、2LDKと1DKなど、間取りが違うと比べにくいので、坪単価や平米単価で考えるとわかりやすいと思います。相場がわかっていれば、安すぎる金額などで取引きしてしまうこともないでしょう。

――価格設定で気を付けることはありますか?

まず、価格はいくらでも高く設定できるのですが、売れる価格を設定する際は、相場のプラス7%が上限だといわれています。もしも、それ以上の価格になると1ヵ月で売れる確率がものすごく下がってしまう傾向があるのです。
また、不動産業界における暗黙のルールで、1ヵ月動きがない物件は売れ残り認定されてしまいますので注意が必要です。高く売れるに越したことはありませんが、あまり欲張ってしまうと結局売れないということにもなりかねないのです。

――購入を検討する際、物件のどこをチェックするべきでしょうか?

大規模修繕の有無や修繕積立金が貯まっているかが重要です。もしも、修繕積立費が貯まっていなければ修繕工事ができないため、そのマンションは、今後、廃れていく一方だといえます。修繕積立費が貯まっている物件も貯まっていない物件も、同じように販売されている場合がありますので注意が必要です。
また、マンションの大規模修繕は、一般的に12年から15年ごとに行われますから、2回目は築24年から30年、3回目が築36年から45年となります。そのため、次の大規模修繕はいつなのか、それに見合う積立金があるのかは確認しておく必要があります。
修繕積立費が貯まっているかどうかは、管理組合に議事録を見せてもらえばわかります。議事録には入居者の家賃滞納の有無や建物の問題など、物件のいいところも悪いところもすべて書かれているので、参考になると思います。
情報開示の姿勢がある不動産仲介業者であれば、購入した後に問題が発生する可能性も低いのではないでしょうか。

――議事録は、簡単に見せてもらえるものですか?

残念ながら私の経験上、10社中2社見せてもらえればいいほうです。もし、見せてくれない場合は、管理会社が機能しているか、どんな住民が住んでいるかがポイントとなります。 駐輪場やゴミ置場などが汚い場合は、そういった状況を許容できる人が住んでいたり、管理会社が機能していなかったりするかもしれません。築年数が古くてもそういった条件がクリアされていれば、管理会社や管理組合が機能しているということなので、いいマンションのはずです。

 

 

<プロフィール>
さくら事務所代表取締役会長
不動産コンサルタント 長嶋修

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社、さくら事務所を設立。「第三者性を堅持した不動産コンサルタント」の第一人者として広く知られるようになる。政策提言、テレビ出演、セミナー、講演など、活躍の場は幅広い。「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞出版社)他、著書多数。新著に『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』(日本経済新聞出版社)。