住宅は、誰にとっても人生の中で一、二を争う高額な買い物でしょう。だからこそ、できるだけ満足のいく物件を選びたいと同時に、適用される制度を存分に利用して、損をしないように気を付けなければいけません。 そこで、数十万~数百万円ものメリットを得られる住宅ローン控除の受け方や、効率良く住宅ローン控除を利用する方法などについてまとめました。
中古マンションの購入時にも利用できる!住宅ローン控除のやり方
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除は、正式名称を「住宅借入金等特別控除」といいます。これは、2021年までに自分が住むための家を買って住宅ローンを組んだ人が、税額控除を受けられる制度です。
控除というと、生命保険料控除や医療費控除などを思い浮かべる人もいるかもしれません。これらは「所得控除」といって、所得税を算出する際のベースとなる「課税所得」を求めるときに、一定の計算に基づいた金額を控除するというものです。
一方の住宅ローン控除は、算出された所得税から直接控除される「税額控除」ですから、それだけ所得税を大幅に減らすことができるのです。
医療費控除や生命保険料控除は、「控除額=戻ってくるお金」ではありませんが、住宅ローン控除の場合、「控除額=戻ってくるお金(控除額が支払った税金を上回る場合は実際の税額が上限)」ということです。
例えば、所得税を30万円納めている人が、2,500万円のマンションを買ったとしましょう。この人は、2,000万円の住宅ローンを借り、12月31日時点での年末残高は1,950万円でした。この場合、この人は19万5,000円もの所得税の還付金を受け取ることができるのです。なお、納めている所得税が19万5,000円よりも少なかった場合は、控除しきれなかった金額を住民税から控除してもらうことができます。
控除は、購入時から10年間にわたって継続され、その上限は4,000万円です。つまり、たとえ1億円の住宅ローンを組んだとしても、毎年受けられる控除額は、4,000万円の1%である40万円が限度ということです。
ただし、返済が進んだ10年後も残債が4,000万円以上残っていて、納めている所得税額が40万円を上回っていれば、上限いっぱいの控除を受けることができます。40万円×10年間=400万円の節税効果を得られることになりますので、4,000万円の住宅ローンを組んでいる人より、最終的に得られるメリットは大きくなるでしょう。
なお、2019年10月~2020年末のあいだに、自分が住むための家を買って住宅ローンを組んだ人に対しては、控除を受けられる期間が10年から13年に延長されます。
中古マンションでも控除の対象になるか
住宅ローン控除は、新築物件でなくても利用することができます。中古マンションを購入した場合に住宅ローン控除を利用できるのは、以下の条件を満たす場合です。
・購入から6ヵ月以内に引越しをして、年末時点も引き続き住んでいること
・購入時の築年数が25年未満であること(耐震基準に適合するマンションなどは例外あり)
・本人の年収が3,000万円以下であること
・床面積が50平方メートル以上あって、半分以上を通常の居住スペースとして利用していること
・10年以上の住宅ローンを組んでいること
・贈与された物ではないこと(購入時に金銭の贈与を受けてそれを物件価格に充当することは可能だが、贈与分については別途差し引かれる)
・親戚や家族など、生計を一にする人物から購入した物件ではないこと
・勤め先から、時価の半額以下で購入したマンションでないこと
そのほか、住宅ローンの利率などの細かい要件がありますが、おおよそは上記を満たす場合に対象になると考えていいでしょう。
住宅ローン控除を効果的に利用する方法
住宅ローン控除は、特別なテクニックを使わなくても十分な節税メリットが得られる制度です。しかし、少し工夫をすることで、より大きな効果を得られる可能性もあります。
住宅ローン控除で、よりメリットを受けられる方法について、いくつかご紹介しましょう。
1 夫婦が連帯債務で住宅ローンを組む
住宅ローンは、個人で組むだけではなく、「連帯債務」として夫婦で組むこともできます。
1つの物件を購入するために、夫婦がそれぞれ別のローンを組んでお金を出し合うことを「ペアローン」といいますが、この場合は、2本のローン契約をする必要があるため、それだけ諸経費も高額になります。
一方、連帯債務という方法を利用すると、夫婦のうち一方が主契約者、もう一方が連帯債務者となることから、契約が1本で済み、コストを軽減できます。さらに、住宅ローン控除は2人で受けられるので、「年末残高の1%が所得税と住民税の合計を上回って、全額は控除されない」という問題を回避しやすくなるでしょう。
夫と妻の負担割合は最初に決めることができますが、実際のマンションの持ち分と同等にするのが一般的です。なお、妻が途中で働けなくなった場合に、夫が代わりに妻のローンを返済すると、返済額を贈与とみなされるおそれがあります。また、連帯債務者は団体信用生命保険に加入することができないため、死亡や高度障害といったトラブルが発生した場合も、返済を続けなければいけません。
連帯債務には上記のような注意点もあるものの、住宅ローン控除を受けきれない場合や、夫のみの収入では希望の借入額に届かないという場合はメリットがあるでしょう。
2 10年間は繰上返済しない
低金利が続く昨今、住宅ローン利率が1%を切ることも珍しくなくなりました。住宅ローン控除の控除率は1%ですから、住宅ローンの繰上返済をしないほうが、かえって得になる場合があります。
実際に繰上返済をしないほうが得になるかどうかは、借り入れている住宅ローンの利率や、繰上返済手数料の有無、繰上返済をした場合の保証料の戻りなどによっても変わります。しかし、条件によっては繰上返済を急がず、10年間は控除を受けるという選択もあります。
3 10年経過後に住み替えを行う
マンションを購入後、10年間の住宅ローン減税が終わるまではそこに住み続け、その後は売却したり賃貸に出したりして、別のマンションを買って住宅ローン控除を受ける方法もあります。
住宅ローン控除の制度が継続していることが条件ではありますが、10年後の買い替えを繰り返すことで、常に減税の恩恵に預かりながらマンションに住めるようになるのです。
10年というのは、室内の設備機器の不具合が出始めたり、マンション全体の大規模修繕が近づいたりするタイミングでもあります。住み替えを考える節目として、住宅ローン控除が終わる「10年」を念頭に置いておくのもいいでしょう。
4 控除を受けているあいだに転勤の辞令が出たら「単身赴任」
住宅ローン控除を受ける条件に、「年末の時点でその家に引き続き住んでいること」というものがあります。しかし、会社からの転勤の辞令など、やむをえない事情がある場合は、「家族がその家に住み続け、転勤が終わった後は本人が帰宅する」ことで、控除を受け続けることができます。
そのため、住宅ローン控除を利用しているあいだに転勤の辞令が出たときは、家族全員で引っ越さずに、単身赴任を選択したほうが、住宅ローン控除のメリットは大きくなります。家が2つになることで発生する生活費なども考えた上で選択しましょう。
5 課税される中古マンションを買う
中古マンションを買うときは、売主が個人(消費税が非課税)か不動産会社(消費税がかかる)かによって、受けられる住宅ローン控除の限度額が変わります。
つまり、不動産会社から購入する中古マンションのほうが、減税メリットは大きくなります。価格を比較するときは表面上の金額だけでなく、最終的なコストについて意識しましょう。
6 消費税増税のタイミングを狙う
消費税が増税されるタイミングで、影響の大きい住宅については、住宅ローン控除の拡大といった税制優遇措置がとられるケースがあります。
そのため、「増税前に慌てて買う」のではなく、「どのような優遇措置があるのか見極めてから買う」ことがおすすめです。
住宅ローン控除の申請方法
住宅ローン控除は、申請して初めて適用される控除です。2年目からは会社員なら年末調整で対応することが可能ですが、1年目は確定申告が必要になります。
確定申告に必要な書類
確定申告には、さまざまな書類が必要となります。確定申告は毎年2月半ば~3月半ばなので、この期間に間に合うよう準備しましょう。
■住宅ローン控除を受ける確定申告に必要な書類
書類名 | 入手先 |
---|---|
残高証明書 | ローンを借入している金融機関 |
源泉徴収票 | 勤務先 |
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 | 税務署または国税庁のサイト |
住民票 | 居住している市区町村役場 |
不動産売買契約書のコピー | 不動産を購入した不動産会社 |
土地・建物の登記事項証明書 | 法務局 |
マイナンバーカードや通知書・身分証明書 | 市区町村役場 |
このほか、適用したい制度によって、長期優良住宅建築等計画の認定通知書のコピーや、住宅用家屋証明書のコピーなどが必要となる場合もあります。
確定申告の方法
自分で確定申告書類を作成できる人は、「確定申告書(A)」と「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を作成しておくとスピーディーです。確定申告書類を作っておけば郵送で申告することもできますし、インターネットを利用して電子申告(e-Tax)することも可能です。
知識がなく不安な人は、税務署や確定申告書作成相談窓口などに必要書類を持って行くことで、係員に説明を受けながら手続き書類を作成できます。
確定申告が終わると、その結果、算出された還付額が数週間後に指定口座に振り込まれます。合わせて、次年度以降利用できる「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が税務署から届きます。この証明書と申告書は、2つで1枚の書類になっています。2~10年目までの分がまとめて届くので、なくさないように保管しましょう。
2年目以降は、必要事項を記入したこの書類と、「年末残高証明書」を会社に提出することで年末調整を受けられます。確定申告の必要はありません。なお、自営業者など、年末調整をしてもらうことができない人は、2年目以降も確定申告を行います。
中古マンション購入は住宅ローン控除をうまく利用しよう
しばしば行われる「賃貸と分譲とどちらが得か」という論争ですが、住宅ローン控除を考えた場合は、「分譲のほうが得である」という結論になるでしょう。年に数十万円ものまとまった金額を受け取れる住宅ローン控除は、使い道を限定しない臨時収入という大きなメリットになります。中古マンションでも条件を満たせば対象になりますから、積極的に利用しましょう。
なお、文中の制度はすべて2019年4月時点でのものです。住宅ローン控除の限度額や期間、利率は随時見直されているため、今後も改定される可能性があります。しかし、制度の大枠は住宅ローン減税の制度が続く限り変わらないでしょう。その時々の情報をチェックして、損のないマンション購入を目指してください。
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