マンションを購入する際は、住宅ローンとは別に毎月支払いが生じる諸費用を考慮して、マネープランを組まなくてはなりません。マンションの日常的な維持管理に使われる「管理費」は、代表的な諸費用のひとつです。
ここでは、管理費の使用目的や適正価格の考え方、金額の見直し方法などについて解説します。
目次
マンションの管理費とは?
マンションの管理費は、共有部分を安心かつ快適な状態で維持管理することを目的として使われる費用です。各戸の負担額は専有面積に応じて割り振られ、当該マンションに住んでいるあいだは、ランニングコストとして毎月負担することになります。
マンションを購入する際は、頭金や購入費用のローン額だけでなく、管理費をはじめとする諸費用まで計算に入れて、支払い計画を立てることが大切です。
管理費の使用目的
国土交通省が定める「マンション標準管理規約」によると、マンションの管理費は以下の目的で使用されます。
<マンション管理費の使用目的>
・管理員人件費
・公租公課(国や地方自治体に納める負担)
・共用設備の保守維持費および運転費
・備品費、通信費その他の事務費
・一部共用部分に関わる火災保険料、地震保険料そのほかの損害保険料
・経常的な補修費
・清掃費、消毒費、およびごみ処理費
・委託業務費
・管理組合の運営に要する費用
・専門的知識を有する者の活用に要する費用
これらの項目は、大きく「マンションの管理組合を運営するための費用」と、「管理会社に支払う費用」に分かれますが、後者が圧倒的に大きなウェイトを占めています。
次に、管理会社が請け負う業務(管理会社から専門業者に依頼する業務を含む)について、具体的に見てみましょう。
<管理会社が請け負う業務>
・エントランスやごみ置き場、廊下、屋上など共用部分の清掃
・中庭の草木やマンションの周りの植栽などの手入れと水やり
・エレベーター、電気設備、給排水設備、消防設備、防犯カメラ、自動ドアなどの保守点検やメンテナンス
・宅配ロッカーの管理
・管理人やコンシェルジュの派遣
・駐車場の管理
このように、マンションの管理費は「共用部分の日常的な維持管理」をおもな目的として使われています。
修繕積立金との違い
管理費と同じように、マンションの維持・管理に関わる諸費用に「修繕積立金」があります。日常的な用途で使われる管理費に対し、修繕積立金は、定期的に行われる共用部分の大規模な修繕、および不測の事故によって瑕疵が生じた場合の修繕など、将来のリスクに備えて積み立てておく費用となります。
マンション標準管理規約によると、修繕積立金を経費として充当できるのは以下のような場合です。
<修繕積立金を経費として充当できるケース>
・一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
・不測の事故、その他特別の事由により必要となる修繕
・敷地および共用部分等の変更
・建物の建て替えに関する合意形成に必要となる事項の調査
・敷地および共用部分等の管理に関し、区分所有者全員の利益のために特別に必要となる管理
「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」には、小規模から大規模まであり、具体的には外壁の塗り替えや給排水設備のメンテナンス、消防設備の取り換えなどが該当します。これらの修繕を実施する時期とその収支計画は、マンションの管理組合が定める「長期修繕計画」を見ればわかります。
中古マンションを購入する際は、「積立金が不足していて、購入後すぐにまとまった一時金を出すことになった」という事態を避けたいもの。前回の大規模修繕を行った時期と次の予定、計画に沿った修繕積立金が十分蓄えられているかといった点をチェックするようにしましょう。
マンションの管理費はどうやって決まる?
マンション全体の管理費は、マンションのあるエリアや新築時の価格、規模に加えて、管理会社への委託割合、共用部分のグレード、サービスの質といったマンション固有の条件によって変わります。
また、その金額は販売と同時に決まり、管理規約として定められます。決められた金額を専有面積で振り分け、各戸が負担することになります。
管理費の金額を決めるマンション固有の要素は、大きく下記の2つがあります。
マンションの設備、サービスのグレード
マンションの管理費の大部分を占めているのは、管理会社への委託費です。販売時に「ハイクオリティなサービス」をウリにしている場合や、特徴的なコンセプトを掲げて設備の充実を図っている場合は、人件費や設備のメンテナンス費用などがかさんで、管理レベルも上がります。そのため、管理費は高めに設定されるでしょう。
例えば、「四季を感じる中庭付き」がコンセプトの物件の場合。一般的な管理費用に加えて、中庭の草木の手入れや水やりにかかる人件費、ベンチやテーブルの修繕費などを管理費から捻出するため、必然的に管理費は上がります。
特に、プールやジム、温泉、噴水などの水に関連した設備があるマンションは、水道光熱費が多くかかるため、管理費が高くなる傾向があります。
デベロッパーの方針と管理会社のサービスレベル
マンションの販売には、売主である分譲会社(デベロッパー)と販売会社、施行会社、管理会社が関わっています。管理費に関係するのは、デベロッパーが設定したマンションのサービス内容と質がどのレベルか、そのレベルを満たすためにどの管理会社を選定するかという点です。
総じて、「デベロッパーの名前を信頼して、ブランドを買う」という消費者は多いものです。大手デベロッパーに紐付く管理会社は、独立系の管理会社に比べて、維持管理にコストをかける傾向があるといえるでしょう。
管理費の「適正価格」の考え方
マンションの管理費の適正価格を考えるときは、「自分が求めるサービスや施設のグレード」と「サービスの運用レベル」に対して、支払う管理費の額に納得できるかどうかを判断基準にしましょう。
自分にとって、価値のない施設やサービスに高い管理費を払うことになれば、誰でも「割に合わない」「適正でない」と感じるものです。24時間常駐のコンシェルジュに必要を感じる人と、そこまで必要を感じない人では、サービスの維持管理費に対する納得感が違います。豪華なラウンジや広々としたゲストルームも、個人の生活スタイルによって重要度は異なるでしょう。
自分がマンションに求める条件と、購入を検討しているマンションに付随する施設やサービスの内容を比較し、「高い」「安い」の判断をすることが大切です。
管理費を引き下げる方法
管理費が高すぎると感じたとき、金額を引き下げる方法は2つあります。それぞれを具体的に見ていきましょう。
管理会社に委託する業務を減らす
1つ目は、管理会社に委託する業務を減らす方法です。依頼している業務内容を一覧にして、無駄があれば省くように管理会社に交渉しましょう。具体的には、常駐している警備員やコンシェルジュの人数を減らす、設備の点検回数を減らす、管理人の勤務時間を適正化し人件費を削減するなどといったことが挙げられるでしょう。
業者による植栽の手入れを減らして居住者が交代で行うなど、管理会社に委託している業務のいくつかを、居住者の自主管理に切り替えるという方法も考えられます。
管理会社を変える
2つ目は、管理会社を変更する方法です。まずは、複数の管理会社に声をかけて、サービス内容や価格の見直しを依頼し、見積もりを取りましょう。現在の管理会社より低価格でサービスの質が維持できる、または無駄を省いて価格を安くできるという管理会社が出てきた場合は、リプレイス(管理会社の乗り換え)を進めます。現在の管理会社に見積もりを見せ、リプレイスを検討していることを伝えて、見直しを依頼してみてください。
大手デベロッパーの場合、管理会社はデベロッパーの関連会社や系列会社で、マンションが完成したときにすでに決まっていることがあります。その場合、管理会社の変更は難しいため、サービスの見直しのみ依頼するといいでしょう。
管理費を引き下げる際の注意点
管理費を引き下げる際に注意したいのは、必要なサービスや仕様の品質まで下げないようにすることです。管理費を安くすることに夢中になって、「安かろう、悪かろう」になってしまっては今後の生活に差し支えます。
サービスのラインナップは維持しながら、自主管理部分を増やすなどして委託部分を圧縮するか、ラインナップを削減して残りのメニューの品質を維持するか、十分検討するようにしましょう。
管理費の引き下げを実現するカギは「管理組合の努力」
管理費の多くは、所有者の口座から自動的に引き落とされますが、管理会社と契約しているのはマンションの管理組合です。そのため、管理費の見直しを管理会社に打診したり、管理会社を変更したりするには、管理組合の総会で、組合員(区分所有者)の過半数の賛成をもって決議しなくてはなりません。
管理費の引き下げは、まずは管理組合に問題を提起し、理事会で討議され決議される必要があります。どうしても実現したい場合、理事会に参加する権利を得るために理事となり、できれば理事長として決議を実行できる立場に立つことをおすすめします。
売却時に滞納がある場合は売却益から充当
管理費を滞納したままマンションを売却した場合、区分所有法に則って、新しい所有者に滞納分の支払い義務が承継されます。中古マンションを購入する場合は、滞納の有無を事前に確認しましょう。
一般的には、売買を仲介する不動産会社が滞納を確認し、売買代金から差し引いて精算してくれるケースが多いため、それほど心配する必要はありません。
マンションの「管理規約」は必読!
マンションの管理費は、日常生活を安全かつ快適に送るために欠かせない費用です。しかし、その金額の妥当性を判断するのは難しく、「高い」と感じてもそのまま支払い続けるケースは少なくありません。管理費を削減するため管理会社を変えたり、委託内容を減らしたりするには、居住者の過半数の賛成を得て理事会で議決する必要があります。面倒ではありますが、目先の負担を軽減できるほか、浮いた費用を修繕積立金に回せるなどのメリットを考えると、検討の余地はあるでしょう。
管理費について疑問が生じたら、区分所有者間の所有関係や共有部分の使用方法などをまとめた「管理規約」で支出の内訳を確認した上で、理事会の議題として取り上げてじっくり話し合うことが大切です。