マンションを売却すると、まとまったお金を得ることができます。しかし、お金を得るということは、税金が発生する可能性があるということでもあります。
マンションを売却したときにかかる税金には、複数の種類がありますから、どのような税金がいくらくらいかかるのかを知っておきましょう。
マンションの売却で税金はどのくらいかかる?種類と計算方法について
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
マンション売却時にかかる税金
マンション売却時にかかる税金には、売却した方全員に課されるものと、該当する方だけに課されるものがあります。マンションを売却したとき、どんな税金がどういった場合に課されるのか見てみましょう。
・印紙税
建物の売買契約書には、所定の印紙を貼付する必要があります。マンションを売却する際は、必ず契約書を作成することになりますから、印紙税もマンションを売却する人全員が納めなければいけません。
・登録免許税
マンションを売却するということは、マンションの所有者全員が移転することになります。このようなときは、不動産の登記が必要になり、登録免許税がかかります。
登録免許税法では、不動産と売る人と買う人が連帯して登録免許税を納付する義務を負う、としています。しかし、実際には、登録免許税は買い主が負担することが多く、売り主が納付するケースはほとんどありません。
ただし、売却するマンションについて住宅ローンが残っている場合は、売却のタイミングで住宅ローンの抵当権を外さなければいけません。抵当権を外す登記は、買い主ではなく売り主が行うべきものですから、登録免許税も売り主が納めることになります。
・所得税と住民税
所得税や住民税は、通常の給与などに対してもかかるものですから、マンションの売却が初めての人であってもなじみ深い税金といえるでしょう。
これらは、「所得があった人」に対してかかる税金ですので、マンションを売却したときに利益が出た場合に納めることになります。なお、「利益が出たかどうか」は、マンションの築年数や保有していた期間などによっても左右されます。単純に、マンションの購入金額と売却額の差によって決まるものではありませんので注意しましょう。
税金の計算方法
分譲マンションを売却したときにかかる税金それぞれについて、計算方法を見てみましょう。
・印紙税
印紙税は、売買契約書の契約金額に応じて決まります。それぞれの金額に応じた印紙を購入し、契約書に貼付することで納税します。
<契約金額ごとの印紙税額>
・100万円超~500万円以内 2,000円
・500万円超~1,000万円以内 10,000円
・1,000万円超~5,000万円以内 20,000円
・5,000万円超~1億円以内 60,000円
・1億円超~5億円以内 10万円
ただし、2020年3月31日まで「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」が講じられているため、1億円以内の物件の契約書の印紙税は半額、1億円超~5億円以内の物件は60,000円となっています。
・登録免許税
マンションを売却して所有権を移転する場合にかかる登録免許税は、固定資産税評価額の2%となっています。計算の基準になる金額は、売却額ではない点に注意しましょう。
ただし、2020年3月31日までは軽減税率が適用されていて、登録免許税は固定資産税評価額の1.5%となります。なお、住宅ローンを組んでいる場合にかかる、土地および建物の抵当権を抹消するための登録免許税は2,000円です。
・所得税と住民税
所得税と住民税を算出するためには、まず、利益がいくら出たのかを計算する必要があります。 利益は、下記の計算式で求めることができます。
利益=売却価格-(取得時にかかった費用+譲渡時にかかった費用)
「売却価格」は、マンションを実際に売却したときの価格です。「取得時にかかった費用」は、マンションの購入金額だけでなく、そのときの仲介手数料やその後必要になったリフォーム費用、登記費用、不動産取得税などを含んだ金額です。「譲渡時にかかった費用」は、譲渡時の契約書の印紙代や仲介会社への仲介手数料などを指しています。
ここで注意しなければいけないのが、「取得時にかかった費用」のマンションの購入代金です。
マンションを含め、資産は年数の経過や使用によって価値が下がっていくものとされ、これを「減価償却資産」といいます。そして、減価償却資産の購入代金を、耐用年数に応じて分割して計上することを「減価償却」といい、減価償却によって計上される費用が「減価償却費」です。
居住用マンションの減価償却費は「取得価額×0.9×償却率×経過年数」で計算でき、建物の償却率は構造ごとに決められていて、国税庁のウェブサイトで確認できます。
居住用マンションとして一般的な構造である、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造の場合、償却率は0.015と定められています。よって、マンションの減価償却費は「購入価格×0.9×0.015×経過年数」で求めることができます。
具体例を見てみましょう。
例)
・建物2,000万円、土地1,000万円の鉄筋コンクリート造の居住用マンションを購入し、諸費用が200万円かかった。
・10年後にこのマンションを2,500万円で売却し、諸費用が100万円かかった。
この場合、「2,000万円×0.9×0.015×10年=270万円」ですから、建物の購入代金から償却費を引いた1,730万円(2,000万円-270万円)が建物の取得にかかった費用ということになります。
利益を求める式にあてはめると、「2,500万円-(1,730万円+1,000万円+200万円+100万円)=-530万円」となりますので利益が出ず、所得税や住民税はかかりません。
それでは、売却額が4,000万円だった場合について計算してみましょう。この場合は、970万円の利益が出たということになります。
売却の際の所得税率は、購入してから5年を境に異なります。
5年以内に売った場合は、短期譲渡所得として「所得税30%、住民税9%」、5年以上経過してから売った場合は、長期譲渡所得として「所得税15%、住民税5%」がかかります。
この例の場合は5年以上経過しているため、所得税と住民税の額は下記のとおりです。
970万円×15%=145万5,000円(所得税)
970万円×5%=48万5,000円(住民税)
なお、2037年12月31日までは、上記とは別に復興特別所得税0.315%(5年以内の売却の場合は0.63%)も課税されます。また、実際の所得税の計算をする上では、各種の税制優遇が利用できる可能性があります。
自宅マンションを売却した場合の税制優遇
自分自身が住んでいるマンション(現在住んでいなくても、住まなくなって3年後の年末までであれば対象)を売却した場合は、各種の税制優遇を受けることができます。
どのような制度があるのか、対象となる要件は何かを理解して、制度を利用しましょう。
3,000万円の特別控除の特例
配偶や父母、子供などといった親戚以外の他人に、自分が住んでいた家を譲渡した場合は、3,000万円の特別控除が利用できます。これは、譲渡益(分譲マンションを売却したことで得られた利益)から最高で3,000万円を控除できるという制度です。
譲渡益は、単純な譲渡額ではなく、そこから物件の取得価額や諸費用を差し引いた金額です。これが3,000万円を超えなければ、譲渡所得税はゼロになります。この制度を利用すれば、所得税や住民税をかなり減らすことができます。
ただし、この制度は3年に1度しか使えません。1年前にこの制度を利用してマンションを住み替え、来年、再度住み替えたいという場合、譲渡益が出れば通常どおり課税されます。また、住宅ローン控除と併用ができない点についても注意が必要です。分譲マンションを売却して新たなマンションに住み替える場合は、住宅ローン控除と3,000万円の特別控除のどちらかを選択することになります。
10年超所有軽減税率の特例
売却した年の1月1日の時点で、10年を超えて保有していた分譲マンションの場合は、譲渡益にかかる税率が軽減されます。ただし、この場合も、住まなくなって3年後の年末まで、親兄弟等への譲渡ではないことといった条件があります。
譲渡益にかかる税率はマンションを保有していた年数で変化し、5年以下なら所得税が30%、住民税が9%です。5年を超えて保有していた場合の税率は、所得税が15%、住民税が5%になります。
10年を超えて保有していたマンションを売った場合は10年超所有軽減税率の特例が適用され、譲渡益のうち6,000万円以下の部分は所得税が10.21%、住民税が4%、6,000万円を超える部分については所得税が15.315%、住民税が5%に軽減されます。
なお、10年超所有軽減税率の特例は、3,000万円の特別控除の特例と併用することもできます。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マンションを売却したときに、必ずしも利益が出るとは限りません。購入時よりも売却額が下がり、損をしてしまったということもあるでしょう。新たにマンションを購入した場合で、前まで住んでいたマンションを売却して損益が出たときは、「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用することができます。
これは、その年の1月1日の時点で5年を超えて所有していた物件を売却して損失が出た人が、10年を超える住宅ローンを組んで新しい住宅を購入した場合、翌年以降3年間、譲渡損失を損益通算できるというものです。適用できれば、損失額を給与所得などから差し引くことができるので、所得税を大きく軽減できます。ただし、その年の合計所得額が3,000万円を超えている場合は、利用することができません。
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
その年の1月1日の時点で5年を超えて所有していた物件を売却して損益が出た場合で、なおかつ住宅ローンが残っているときは、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用して損益通算をすることができます。譲渡したマンション売買契約日の前日の時点で10年以上の住宅ローン残高があることや、譲渡価格が住宅ローン残高を下回っている必要があります。
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と同様に、その年の合計所得額が3,000万円を超えている場合は、利用することができません。
分譲マンションを売却したときの税金にはさまざまな優遇制度がある
分譲マンションを売却したときに、税金を納めなければならないかどうかは、売却額と購入時の金額、諸費用の額などによって変わります。
さまざまな優遇制度があるため、利用できる制度は積極的に利用して節税しましょう。大きな金額が動く取引きですから、損をしないよう賢く立ち回ることが大切です。
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