住宅の買い替えを検討する際は、所有しているマンションを高く売って、少しでも新居を買う資金にしたいと思うもの。しかし、マンションを高く売るためには、どのような点に気を付ければいいのかなど、正しい情報を知っておく必要があります。
そこで、売れるマンションの条件や価格設定のコツについて、不動産コンサルタントの長嶋修さんに話を伺いました。
【専門家インタビュー】マンションを高く売るには?売れるマンションの条件や価格設定のコツ
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
マンションを売る前に知っておきたいこと
――マンションを売るときにはどのようなお金が必要ですか?
物件を売りに出す際、不動産仲介業者に売却のための活動費用として、仲介手数料を支払う必要があります。これは、物件が売れた際にかかる成功報酬のため、売買契約を交わした後に支払うことになります。仲介手数料は、宅地建物取引業法により、上限が決められています。
■売買価格と仲介手数料
販売価格 仲介手数料
200万円以下 取引額の5%以内
200万円超 400万円以下 取引額の4%以内
400万円超 取引額の3%以内
高く売れるマンションの条件とは?
――高く売れるマンションの条件は何でしょうか?
現在は、駅から近いことが一番の条件となっています。
自動車の保有率が下がっていることや、共働き世代が増えていることが、駅近物件が好まれる理由です。子供がいる場合、車で保育園まで送り届けた後、自分は駅から電車に乗るとなると、どうしても時間がかかります。そういった理由から、駅から徒歩15分の100平米マンションよりも、徒歩3分の70平米のマンションを選ぶ傾向が年々強くなっています。駅近の物件を持っている場合は、今後も売れる可能性は高いですね。
――駅近とは、どのくらいを指すのでしょうか?
今は、駅から徒歩7分を超えると売れ行きが悪くなるといわれています。
駅から1分離れると、どのくらい平米単価が下がるかは「駅からの徒歩距離1分あたりの中古マンション成約単価格差」のグラフを見てもらうとわかります。
2018年5月時点で、1分離れると平米あたり約18,000円下がることになります。3LDKの65平米のマンションで計算すると、1分ごとに117万円下がる計算になります。
駅から遠い物件は、今後、価格は確実に下がっていきますので、もし、お持ちの方がいれば、早めに手放したほうがいいかもしれません。
――築年数が新しいマンションのほうが高く売れるのでしょうか?
昔と比べて、築浅の物件と築古の物件の価格差は、どんどん縮まってきています。
「新築・中古マンションの価格差」のグラフを見てもらえればわかるように、新築マンションは中古マンションに比べて、約2倍の価格になっています。新築マンションは贅沢品なんですね。今では、中古マンションを購入することも当たり前となってきました。
この金額差がありますから、築30年から40年経った中古マンションでも、新築マンションより売れている傾向があります。東京の新築マンションを購入するのであれば、神奈川で中古マンションが2つ買えますから。中古に市場が流れていくのは当然といえます。
また、中古マンションも価値が見直されてきています。広尾ガーデンヒルズは築35年くらい経っていますが、当時7,000万円だった物件価格が、今は1億4,000万円と2倍近くに上昇しています。建物自体がブランド化したこともありますが、今後、都心の中古マンションの相場もどんどん上がっていくと思います。
――2020年以降は土地の価格が下がるので、早く売ったほうがいいというのは本当ですか?
2020年前後に下がるという情報をよく聞きますが、私は関係ないと思います。オリンピックの前後に不動産価格が下がったということは新興国では起こりうることですが、先進国ではそういったデータはありません。選手村が建設されている晴海など、ピンポイントのエリアは影響があるかもしれませんが、東京や関東、ましてや日本という広い地域としての影響はないでしょう。
マンションを高く売るために覚えておきたいこと
――不動産仲介業者の選び方のコツを教えてください。
では、悪徳な仲介業者のタイプをご紹介します。まず、見積もりの価格があまりに高い不動産仲介業者はやめておいたほうがいいですね。
見積もりは、市場価格の相場や建物の状態などを基に出しますので、そこまで大きく乖離が生まれることはありません。5%から10%の価格差であれば問題ないですが、それ以上に差がある場合はお客さんをつけるために高く見積もって、結果、売れないとか、値下げを強要してくるといった可能性があります。不動産業界における価格設定の上限は、相場の7%といわれています。それ以上になると売れ残ってしまう可能性があるので、意識しておくといいでしょう。
また、囲い込みをする不動産仲介業者もいます。不動産仲介業者は、もし売りたい人と買いたい人をマッチングさせることができれば、それぞれ3%の手数料、合計6%の手数料が入るしくみになっています。
そのため、売りの依頼を受けたときに、ほかの業者に紹介せず、目の前に売主が現れるまで情報の囲い込みをすることがあります。囲い込みは宅建業法で禁止されていますが、証拠がないため横行していることは少なくありません。
不動産は売りの依頼を受けてから1週間以内に不動産情報のデータベースに登録するのがルールですが、登録をしない場合や、データベースに登録する際の証明書だけ発行して情報を削除するといった悪質なケースもあるようです。
こういった不動産仲介業者に出会う可能性はないとはいえません。そのため、媒介契約を結ぶ際は、契約期間をあらかじめ短くしておくといいでしょう。3ヵ月で契約をすることが多いのですが、1ヵ月など短期間で組んで、良ければ更新するようにしておけば、万が一動きがなかったり、囲い込みをされていたりすることがわかっても、早めに対処できます。
――マンションを高く売るために気を付けるべきことを教えてください。
相場より少しでも高く売りたいのであれば、土日はなるべく家にいたほうがいいですね。内見に来る7~8割の人は土日の休みを利用して見に来るので、なるべくチャンスを逃さないようにすることが大切です。
あとは、案内するときに内見者の後をうろうろついて回ったり、聞かれていないことをしゃべったりしないことです。基本的には、聞かれたことに答えるスタンスがいいでしょう。
また、建物についての詳しいことは、不動産仲介業者に聞くはずなので、売主ができるのは、近所にどういう人が住んでいるとか、買い物はどこに行くのが良いのか、学校の評判などといった住んでいる人にしかわからないことを伝えると喜ばれます。
売却価格を設定する際のコツ
――売却価格を決めるときのコツはありますか?
見積もりの価格や周辺の物件の価格を参考にした上で、購入すると想定されるターゲットを考えておくことが大切です。
「共働きで幼稚園に通う子供がいる3人家族で、年収は〇〇万円ぐらいの人が買う」などと想定しておけば、価格設定や広告の出し方などが決まります。その価格で売れないという場合には、売却価格の見直しよりも、まずはターゲットの見直しや広告の出し方を変えることをおすすめしています。
イメージはいいが価格が見合っていないのか、価格は相応だがイメージが違ったのか、本当は3人家族でなくて、リタイアした夫婦が住んだほうがその物件は価値が上がるのかもしれません。
もし、売れない場合は、ターゲットの見直しやリフォームなど、できることを試すのが先であり、価格を下げるのは最終手段です。価格を下げる場合でも、市場価格の7%までが下限と思ってください。
――リフォームしたほうが高く売れますか?
もちろん、きれいな状態のほうが売れやすいですが、リフォームは費用対効果を考えた上で行う必要があります。とはいえ、壁に穴が空いているなどは直しておいたほうがいいですね。あとは、キッチンなどの水回りが汚いのはNGなので、プロの業者に頼んできれいにしておくべきです。
白い壁は色を塗るだけでも雰囲気を変えることができますし、一面だけ柄のあるクロスを貼るなどの簡単なリフォームがおすすめです。私が不動産仲介業者の営業をしていたときは、リフォーム後のイメージをしやすいように、壁紙のクロスの見本を置いておきました。何もない真っ白な空間だけを見るよりもイメージしやすくなるので、費用対効果は高いですね。
――リフォーム費用はこちらで負担するべきなのでしょうか
クロスの見本などはあくまでも提案なので、リフォーム代を売主が負担するのか、買主が負担するのかは交渉次第になります。売主の価格は売値ではなくオファー価格なので、買主がいくらで買いたいのかが肝心です。そこから交渉が始まって、売主と買主の交渉次第で売値が決まります。費用対効果が高ければ、売主が負担しても問題ないかと思います。
これは、購入の際の話ですが、売主にはさまざまな事情があるので、税金対策で早く手放したい人もいれば、希望価格から1円も下げたくない人もいます。1ヵ月売れなければ500万円下げようと考えているかもしれないし、交渉してみないとわからないものです。これは売主も買主も同じことです。すべては交渉で決まる話ですので、交渉する前にリフォームなどにお金をかけてしまうのは得策ではないと思います。
買主にいい印象を与えるための工夫
――いい印象を持ってもらうためにできることはありますか?
最もいい方法は、「ホームステージング」です。つまり、家を飾った状態で売りに出すのです。
これは、日本以外の先進国ではだいたい行われている方法ですが、レンタルの家具を入れたりお花を飾ったり、住んだ後のイメージがしやすいようにしておくのです。実際に、この方法で買主がつきやすくなります。
日本でよく行われているのは、売主が住んでいる状態を見せてしまうことです。確かに、生活が想像しやすいかもしれませんが、あまりに生活感があると買主が夢を見づらくなってしまいますので、生活感は少なく、住んでいるイメージを演出することが大切です。
ほかにも、照明器具を交換するといったことは大切です。暗い部屋を見せられて、明るいイメージはなかなか想像しづらいものですから、できることなら照明器具は新しい物や明るい物に交換するなどして、部屋は明るくしておくといいでしょう。 また、家庭特有のにおいが気になる場合もありますので、内覧の前には換気 をしておいたり、カーテンを開けておいたり、風通しがいい部屋だとわかるように窓を開けておくのもポイントです。
海外であれば、押入れなども買主が勝手に開けて見ることがあるのですが、日本人は遠慮してしまうのでなかなかできないようです。しかし、収納は引越しを検討する上で大きなポイントになります。あらかじめ買主が気になりそうな押入れや靴箱、クローゼットなどは、売主側から見せるのがいいでしょう。
<プロフィール>
さくら事務所代表取締役会長
不動産コンサルタント 長嶋修
1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社、さくら事務所を設立。「第三者性を堅持した不動産コンサルタント」の第一人者として広く知られるようになる。政策提言、テレビ出演、セミナー、講演など、活躍の場は幅広い。「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞出版社)他、著書多数。新著に『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』(日本経済新聞出版社)。
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