2020年の東京オリンピック・パラリンピックの競技場や選手村が集中する湾岸エリアをはじめ、東京都内のさまざまなエリアで進む再開発。国際競争力の強化を図るべく、特定都市再生緊急整備地域を中心として都市再生が進んでいます。
しかし、再開発という言葉だけが独り歩きして、目的やメリット、再開発によって街や暮らしがどのように変化するのかといった点は、あまり知られていません。ここでは、そもそも再開発とは何か、そして、再開発によって東京はどう変わっていくのかについて解説します。
再開発とは?東京は今後、どう変わっていくのか
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- 再開発の目的は都市機能や住環境の改善
- 都市再生緊急整備地域・特定都市再生緊急整備地域
- 国家戦略特区
- 再開発の流れ
- 再開発地域に住むメリット
- 1 街としての利便性が格段にアップする
- 2 街並みがきれいに整う
- 3 安全が確保できる
- 4 マンションのハード・ソフトがともに充実している
- 5 街がブランド化し、資産価値が上がる
- 再開発地域に住むデメリット
- 1 再開発前とは街の雰囲気がまったく変わる
- 2 治安に変化が生まれる可能性がある
- 3 駅が混み合う
- 4 不動産価格が上がって購入しにくくなる
- 再開発が進む東京・今後の注目地域は?
- 新駅とのセットで期待大!「品川駅・田町駅周辺地域」
- 国際アート・カルチャー都市を目指す「豊島区役所跡地」
- 資産価値を重視するなら再開発地域は狙い目
再開発の目的は都市機能や住環境の改善
再開発(市街地再開発事業)は、都市再開発法に基づき、時代や社会経済情勢の変化に対応しきれていない都市の機能、および住環境の改善を図り、安心・安全な街としてよみがえらせることを目的としています。
開発の手法は、既存の公共施設や道路などを一から見直し、計画的に整備し直す「スクラップ・アンド・ビルド」方式です。建物や施設を個別に建て直したり修繕したりするのではなく、細分化された土地を共同化した上で総合的に街づくりを進めることによって、より機能的で安全・快適な生活空間を創出することができます。
再開発の対象となるのは、土地利用の細分化、木造建築物の密集、公共施設の不足といった都市機能の低下が見られる地域です。古くからの木造住宅が数多く残る西新宿などで進む再開発プロジェクトは、その代表例だといえるでしょう。
また、2002年には、民間が主導する再開発を国が支援することを目的とした、都市再生特別措置法が施行されます。これにより、民間の創意工夫を活かし、都市開発事業を推進することができるようになりました。
都市再生緊急整備地域・特定都市再生緊急整備地域
「都市再生緊急整備地域」は、都市開発事業等を通じて速やかに市街地を整備できるよう、政令で指定されている都市再生の拠点です。国全体の競争力を牽引しうる地域について、官民が連携して強力に整備を推進する必要があるとして指定されます。2018年10月24日時点では、全国55の地域が指定されています。このうち、都市の国際競争力を強化する上で特に有効と判断された地域については、「特定都市再生緊急整備地域」にも指定されています。
特定都市再生緊急整備地域は、全国13地域・約41平行キロメートルあり、東京都内は以下の5地域になります。
<東京都内の特定都市再生緊急整備地域>
・東京都心・臨海地域
・品川駅・田町駅周辺地域
・新宿駅周辺地域
・渋谷駅周辺地域
・池袋駅周辺地域
国家戦略特区
特別な規制緩和・税制優遇の対象となる「国家戦略特区」の指定も、再開発と大きな関わりがあります。東京圏では、東京都、神奈川県、千葉市、成田市が国家戦略特区に指定されました。この地域において、実施したい事業が規制緩和の対象になれば、ほかのエリアではできないことにチャレンジできます。
東京圏の国家戦略特区は、グローバルなビジネス拠点の形成、および世界に通用する競争力を持った新事業の創出を目的としたさまざまな取組みを行っています。医療関連の規制緩和、旅館業法が適用されない民泊の実施などのほか、交通網の強化やビジネス拠点の整備を行う都市再生も、そのひとつとして注目されています。
再開発の流れ
再開発は、人口減少、街区整備の必要性といった課題が地域の土地権利者のあいだで共有され、機運が高まってきた頃合いで、地方自治体が主導して行われます。準備・検討段階では、有志が集まって再開発のしくみを勉強したり、地域にふさわしい再開発の在り方を考えたりしながら、再開発の具体的な構想を練り、行政やデベロッパーとともに都市計画を決定します。
決定した都市計画は、都道府県知事の認可を経て実行に移ることになりますが、スムーズに進捗するとは限りません。経済変動の影響などで計画が二転三転したり、着工後にさまざまな問題が起きて工期が遅れたりして、10年、20年と長期にわたって再開発に取り組んでいる地域も少なくないのです。長い時間をかけて進む再開発には、地域の課題を解消し、ニーズに即した街づくりができる一方、完成までの期間があまりに長すぎると、当初計画していた施設用途や街並みが現状にそぐわなくなるリスクがあることも確かです。
再開発地域に住むメリット
人気のマンションの条件といえば「駅近」や「都心」が挙げられますが、再開発地域に建てられたマンションは、これらに次いで人気があります。再開発地域に住むとどのようなメリットがあるのか、具体的な例を見てみましょう。
1 街としての利便性が格段にアップする
再開発では、マンションを単独で建てたり、商業施設だけを造ったりするのではなく、エリア全体を総合的に見て、住宅やオフィスビル、保育施設、病院などを配置していきます。食料品から衣料品まで、生活必需品は大型商業施設で一通りそろい、子供の送り迎えも楽々。クリニックモールで大抵の病気は診てもらえ、休日には施設内の映画館やスポーツジムで過ごせるとなれば、住宅の周辺だけで快適な生活が成り立ちます。
道路が整備されて交通インフラが整えば、通勤や通学も便利になるでしょう。
2 街並みがきれいに整う
再開発をすると、雑然として一貫性に乏しい街並みが、1つのコンセプトのもとにパッケージ化されて、きれいに整います。
再開発地域は、計画的に配置された緑豊かな公園とタワーマンションが無理なく溶け合うといった、美しい景観が魅力です。
3 安全が確保できる
近年の再開発は、将来起こりうる大地震をはじめとする災害を念頭に、都市の中のリスクをできる限り排除しています。特に、木造家屋が密集する地域などは、土地の用途を見直して、一から使い方を考えていくため、安全性に優れた住環境が実現できます。
4 マンションのハード・ソフトがともに充実している
再開発地域のマンションは、総じて大規模になり、スケールメリットを活かして共有システムが充実する傾向があります。中庭やゲストルーム、キッズルームといったハード面のほか、24時間の有人管理、クリーニングの受け付け等に対応するコンシェルジュサービスなど、ソフト面も期待できるでしょう。
5 街がブランド化し、資産価値が上がる
再開発によって居住者や利用者の流入が増加すると、エリアの人気が高まってブランドとしての価値が生まれます。
松濤や田園調布のように、「そこに住んでいること自体に価値がある」というエリアになれば、将来的な資産価値の向上も見込めます。
再開発地域に住むデメリット
さまざまなメリットがある再開発ですが、反対にデメリットはないのでしょうか。再開発地域に住むデメリットについても考えてみましょう。
1 再開発前とは街の雰囲気がまったく変わる
再開発では、よりクリーンで明るい雰囲気を求めるため、街の雰囲気が一変します。個性的でどこか昭和の香りがする店が立ち並ぶ駅前が、高層ビルがそびえ立つ未来都市に生まれ変わることも珍しくありません。
以前の街の情緒や雰囲気が好きで引越しを考えている場合は、再開発によってどう変わるか、お店や施設がどのように移転するか、事前に確認しておく必要があります。
2 治安に変化が生まれる可能性がある
再開発をすると、住む人だけでなく、遊びに訪れる人も多くなり、治安が変化する可能性があります。整備されて目が行き届くようになったことで治安が安定することもあれば、夜遅くまで開いている店が増えて若者が集まるようになったり、近所とのつながりが希薄化したりと、反対に不安定になることもあります。
3 駅が混み合う
再開発によって工場の街から家族の街へと変貌を遂げた武蔵小杉は、人口増加のあおりを受け、横須賀線と湘南新宿ラインの混雑が激化し、混雑を分散化させるための対策に追われています。
再開発で急激に人口が増えれば、同様の問題が別の地域でも起こるかもしれません。
4 不動産価格が上がって購入しにくくなる
段階的に進む再開発は、終了するごとに周辺エリアの物件価格が上がる傾向にあります。購入を検討するタイミングによっては、当初の予算では足りなくなるという状況も考えられるでしょう。
再開発が進む東京・今後の注目地域は?
東京のさまざまな場所で進む再開発。今後の資産価値の向上を見据えて、注目すべきエリアを2つご紹介します。
新駅とのセットで期待大!「品川駅・田町駅周辺地域」
田町駅と品川駅のあいだに新設される、高輪ゲートウェイ駅付近の再開発は、13ヘクタール(東京ドーム約2.8個分)にも及び、住居はもちろん商業施設、オフィスビルなどの誘致が予定されています。2020年に暫定開業されれば、実に49年ぶりとなる山手線新駅です。品川駅や羽田空港へもアクセスしやすいとあって、ビジネスや観光での利用も見込めるでしょう。非常に期待できるエリアです。
国際アート・カルチャー都市を目指す「豊島区役所跡地」
豊島区役所の南池袋への移転に伴い、旧庁舎、および隣接していた豊島公会堂、区民センター、分庁舎の跡地が一体化されて、再開発エリアとなりました。全部で約9,800平方メートル弱の広大な土地には、新たなビジネス拠点となる地上33階・地下2階建てのオフィスビル「ハレザタワー」のほか、8つの劇場を備えた複合商業施設「ハレザ池袋」が建ちます(グランドオープンは2020年夏予定)。
完成後は、豊島区が掲げる「国際アート・カルチャー都市」のシンボルとして、多様な文化を発信する予定です。
資産価値を重視するなら再開発地域は狙い目
東京圏では、エリアが抱える課題の解決や、低下する都市機能の刷新を目的として、複数の地域で再開発が進んでいます。特に、国際的な競争力を高めるための拠点として指定された国家戦略特区では、規制緩和や税制優遇といったバックアップもあり、より大胆な改革が実行される傾向があります。
再開発が進むと、街は安全で住みやすく、快適な空間へと生まれ変わる傾向が強いです。国内外を問わず多くの人や企業が流入する生産性の高いエリアとして注目を集めるようになれば、再開発エリアの地価は上がり、資産価値も高まるでしょう。再開発地域についての情報は、「東京都都市整備局」のウェブサイトで確認できます。不動産の売買を検討する際は、これまでの開発地域や開発中の地域について、一度確認してみることをおすすめします。
注目のエリア
※実際の流通価格を保証するものではありません。予めご了承ください。
人気の記事
- マンションバリューマガジン編集部
PICKUP
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー