「戸建ては土地がつくがマンションは部屋だけ」といわれることがあります。もしそうなら、マンションが立っている土地は、いったい誰のものなのでしょうか。
「分譲マンションを購入する」という行為で得られる権利は、専有部分である部屋の区分所有権だけではありません。マンション購入にかかわるさまざまな権利についてご説明します。
所有権って何?マンションを買ったら土地がついてくるって本当?
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
マンションの所有権とは?
戸建てを購入した際は、基本的に建物と土地の所有権が手に入り、自分の名義になります。一方、マンションの場合、購入したときに手に入るのは「部屋」の権利だけだと思われがちですが、実際は3つの権利を手に入れることになるのです。
具体的な権利について、見ていきましょう。
専有部分の区分所有権
専有部分の区分所有権とは、自分の購入したマンションの部屋を所有し、自由に使ったり、内装を変更したりしてもいいという権利です。分譲マンションは、多くの人が共同で住む物ですから、所有権も、戸建てのようなただの所有権ではなく、それぞれの持ち分に従った「区分所有権(決められた区分を所有できる権利)」ということになります。
共用部分の持分権
マンションのエントランスや階段といった共用部分は、マンション住人の誰もが立ち入ることができ、全員で利用する場所です。マンションを買った場合、全員がこの共用部分に対する持分権を保有します。
共用部分は、マンションの持ち主全員が共同で保有するものですが、「◯◯さんはエントランスの右端◯平方メートル」「△△さんは1階の階段の下半分」など、共用部分を分割して所有しているわけではありません。
そこで、共用部分に関しては、「すべての共用部分に対する持ち分」だけが決められています。たとえ持ち分を保有していても、ほかの人の承諾を得ずに個人的に利用したり、勝手に工事をしたりすることはできません。
敷地権
敷地権というのは、マンションが立っている土地に関する権利です。マンションが立っている土地は誰のものかというと、こちらもマンションを保有している人全員が、それぞれの持ち分に応じて保有していることになります。
共有部分の持ち分とは違い、敷地権は具体的に「◯平方メートル」と決められています。これは、区分所有権を持つ部屋の広さに応じて決まり、敷地権の広さに応じて、土地に対する固定資産税や都市計画税が課税されます。分譲マンションの場合でも、部屋だけでなく、土地に対する税金を支払う必要があるのです。
ただし、これは、具体的に「マンションが立っている土地の中のどの部分を自分が保有している」というものではありません。マンションの敷地全体の中の、持ち分を示すのが敷地権です。
なお、分譲マンションでは、部屋の区分所有権と土地の敷地権は、まとめて登記されます。そのため、「部屋は持ったまま土地だけを売る」ということは、基本的にできません。
マンションの敷地権について知っておきたいこと
分譲マンションの所有者が持つことになる権利、「敷地権」について、もう少し詳しく見てみましょう。
マンション特有の土地の登記方法
「敷地権は、マンションの土地に関する権利」という説明をしましたが、マンションの敷地に関する権利には、「敷地利用権」というものもあります。より正確な表現をするのであれば、敷地権というのは、「一部の敷地利用権に対する呼び名」ということになるでしょう。敷地権がどういうものなのかを知るためには、まず、土地と建物の登記について理解しておかなければいけません。
不動産には、「登記」があります。新しく不動産を買った場合は、持ち主が誰であるか、どのくらいの大きさ(広さ)なのかといった事実をはっきりさせるため、登記しなければいけません。土地と建物は、それぞれ別個の不動産ですから、一戸建ての場合は、土地と建物を1つずつ、合計2つの登記をすることになります。
ところが、マンションの場合は、土地と建物が別個にあることは事実ですが、両者をバラバラに売買したり、貸したりすることは基本的にありません。それにもかかわらず土地と建物の登記が別々になっていると、登記の手間が増えますし、1つの物件を多くの人が共有していることから、手続きも複雑になるでしょう。
そこで、マンションの部屋を所有する権利(区分所有権)と、土地を利用する権利の2つをまとめて登記するようになりました。このとき、区分所有権といっしょに登記された、土地を利用する権利のことを敷地権と呼ぶのです。
敷地権がないマンションもある
マンションの土地に関する権利である敷地権ですが、マンションによっては、敷地権が設定されていないものもあります。なぜかというと、マンションの区分所有権と敷地利用権をまとめて登記するようになったのが、1983年の区分所有法の改正以降のことだからです。
それ以前は、マンションの登記も区分所有権と敷地利用権、それぞれについてなされていました。これがそのままになっている物件については、敷地権という形での登記がされていない可能性があります。
このような登記を放置している物件は、売却しようとしたときにトラブルになるリスクがあります。別々に登記するということは、それだけ買い主に負担をかけることになるからです。また、「どうして1つになっていないのか?」と、不審に思われるおそれもあります。
敷地権の登記をしていない物件を保有している場合は、登記を今のやり方に変えておいたほうがいいでしょう。
借地権付きマンションの場合の土地の権利
それほど数は多くないものの、マンションの中には「借地権付きマンション」というものも存在しています。この場合、部屋の区分所有者が土地の敷地権を保有しているわけではありません。
そもそも、借地権というのは、土地を借ってそこに自宅を建てる権利のことです。土地を買うのではなく、借地権を買い、利用料を支払うことでそこに住むというのが借地権です。
戸建てで目にすることの多い借地権付き住宅ですが、マンションの場合も考え方は同じです。借地権付きマンションでは、マンションの区分所有者とは別に土地の所有者(地主)がいて、区分所有者が地主から土地を借りることで、借地に建設されたマンションに住むことができます。
借地権には、定期借地権と普通借地権の2種類があります。
・普通借地権
普通借地権は、契約満了時に更新ができる借地権です。契約満了時に借地に建物が立っている場合、借地人は建物を解体して更地にして返却する必要があります。しかし、正当な理由がない限り、契約の更新は地主側から断ることができません。地主側の理由で契約更新を拒否したい場合は、借地人は地主に建物を買い取ってくれるよう請求する権利があります。
・定期借地権
定期借地権は、一定の期限(50年以上)を定めた借地権で、契約の更新はできません。また、契約期間が満了した後は、更地にして返却する必要があります。分譲マンションの場合、将来は老朽化が進むことが想定されるため、普通借地権ではなく定期借地権を設定したものが多くなっています。
定期借地権付きマンションを購入するメリットに、土地に対する固定資産税や都市計画税の納付をする必要がなく、マンションの販売価格も相場よりも安めであるという点が挙げられます。
ただし、デメリットも多く、契約期間満了後に更地にするための費用を別途積み立てる必要があったり、土地を借りるための地代を支払ったりする必要があります。地代は値上がりする可能性もありますし、物件の担保価値が低くなることから、住宅ローンも組みづらいでしょう。
マンションを買うときは土地についても意識しておこう
マンションを買うときは、ついつい間取りや設備に目が行きがちです。しかし、不動産を購入する以上、土地の権利についてもしっかり知っておかなくてはいけません。
自分自身が買うことになる不動産にどのような権利があるのか、十分理解しておきましょう。
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