分譲マンションの土地や建物といった不動産は、その所有者をはっきりさせるために、法務局で情報を記録しなければなりません。これを登記といいますが、不動産登記法によって、登記を行うことが定められています。
登記情報は登記簿に記載され、そこに該当不動産の所有権や賃借権、抵当権などを持った人が誰なのかが明記されます。そのため、不動産の所有者が変わる場合は、名義変更をしなければいけません。
ここでは、相続や贈与などでマンションの名義を変更する必要が出た場合の、手続きの仕方についてまとめました。
マンションの名義変更は自分でできる?手続きの流れと必要なもの
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
マンションの名義変更が必要なとき
一般的に、名義変更を行う必要があるのは、大きく次の4つのケースに分けられます。
・売却
マンションを第三者、あるいは身内などに売却した場合です。身内への売却であっても、所有者が変わることになるため、名義変更が必要になります。
・相続
親などからマンションを相続した場合です。相続人が複数いる場合、誰が相続するのかを決めて名義変更をします。複数人で1つのマンションを相続する場合は、共有名義で登記を行います。
・贈与
親から子供へのマンションの生前贈与のほか、夫名義だったマンションを夫と妻の共有名義にするといった場合は贈与にあたります。
・財産分与
夫婦が離婚する際は、婚姻期間中に築いた資産について、夫と妻のどちらが保有するのかを決めなければいけません。これが財産分与です。マンションの名義人を変更する場合だけでなく、共有名義のマンションをどちらか一方の名義にする場合も、財産分与にあたります。
マンションの名義変更の流れ
マンションの名義変更は、基本的に5つのステップによって完了します。詳細な方法や必要な書類は名義変更の理由によって異なりますが、基本の流れは同じです。
1. 法務局や司法書士への相談
不動産の名義変更では、一般人にはなじみのない言葉を多く目にすることになりますし、手続きも書類1枚出して終わりというわけにはいきません。そのため、何が必要なのかをあらかじめ法務局や司法書士に相談して確認しておきましょう。何を用意しなければいけないのかがわかっていないと、二度手間、三度手間になってしまうからです。
名義変更による不動産登記に必要な書類は、法務局に電話をして問い合わせることができます。登記を自分で行うのではなく、司法書士に依頼する場合は、自分自身で用意しなければいけない書類について指示を仰ぎましょう(司法書士が必要書類の取得まで行うケースもあります)。
2. 必要書類の取得
用意しなければならない必要書類がわかったら、それら書類を集めます。必要書類は売却や相続といった手続き内容によって異なりますし、あまり目にする機会のない特殊な書類も含まれる場合があります。抜けがないようにリストアップして、確認しながらそろえましょう。
なお、不動産の名義変更に伴う手続きに必要な書類の中には、取得時期が最新年度のものと限定される場合があります(不動産を相続する際の固定資産税評価証明書など)。発行された年月が古い書類を使おうとする場合は、問題がないかあらかじめ法務局や司法書士に確認しておきましょう。
3. 必要書類の作成
必要書類の中には、記入するなどして作成しなければならないものがあります。
不動産の名義変更に際しては、所有権移転登記のための、登記申請書の作成が必要です。この申請書は、名義変更する理由や状況などによって、記載する書類が異なります。法務局のホームページで書類をダウンロードすることもできますが、どれを使うのかはあらかじめ法務局に相談して確認しておくことをおすすめします。また、名義変更の理由などによって、登記申請書以外の書類を作成する場合があります。
しかし、これらの書類は様式が複雑で、記入例を見ても何を書けばいいのかわからないということもあるでしょう。司法書士に依頼した場合は司法書士が必要書類を作成してくれますが、そうでない場合は、再度法務局に相談して、作成をサポートしてもらうことをおすすめします。
ただし、法務局での作成相談は事前予約制で、直接窓口まで行く必要があります。時間制限もありますので、なるべくスムーズに終えられるよう、必要書類をまとめた上で予約を取りましょう。
4. 書類提出
必要書類の取得や作成が完了したら、法務局に提出します。提出は窓口でも行えますが、郵送でも可能です。このほか、オンライン申請も行うこともできます。
5. 完了書類を受け取る
書類に問題がなく、名義変更を完了することができた場合は、後日、完了書類が発行されます。
完了書類は法務局に取りに行くか、郵送で受け取ることができます。
マンションの名義変更に必要な書類
マンションの名義変更に関する申請書は、所有権移転登記のための登記申請書となりますが、申請書以外にも、名義変更が生じる理由に応じて添付書類を提出する必要があります。それぞれのケースによってどのような書類が必要になるのか、主なものをまとめました。
なお、実際の手続きに何が必要になるのかは、同じケースであっても、個人の状況等によって異なります。正確な必要書類については、あらかじめ法務局や行政書士などに状況を説明した上で、指示を受けてください。
<売却>
マンションを売却する場合に必要な書類です。
・登記申請書
・印鑑証明書
・住民票
・売買契約書
・登記済権利証、または登記識別情報通知
・固定資産税評価証明書
・委任状(代理人が申請する場合)
<相続>
親などから遺産としてマンションを相続する場合に必要な書類です。
・登記申請書
・登記済権利証、または登記識別情報通知
・固定資産税評価証明書
・遺産分割協議書
・相続人の印鑑証明書(全員分)
・相続人の戸籍謄本(全員分)
・住民票(相続人のもの)
・亡くなった人の戸籍謄本(出生から死亡までの経緯がすべてわかるもの。結婚や転籍している場合はその前のものも必要)
・亡くなった人の最後の住所地がわかる住民票や戸籍の附票
・委任状(代理人が申請する場合)
<贈与>
親から子への生前贈与など、マンションという不動産を贈与する場合に必要な書類です。
・登記申請書
・不動産贈与契約書
・登記済権利証、または登記識別情報通知
・固定資産税評価証明書
・住民票(贈与された人のもの)
・印鑑証明書(贈与した人のもの)
・委任状(代理人が申請する場合)
<財産分与>
離婚の際、所有しているマンションの所有権をどちらにするのか決める場合に必要な書類です。
・登記申請書
・財産分与協議書
・登記済権利証、または登記識別情報通知
・固定資産税評価証明書
・住民票(財産分与を受ける人のもの)
・印鑑証明書(財産分与をした人のもの)
・離婚の記載のある戸籍謄本
・委任状(代理人が申請する場合)
マンションの名義変更にかかる費用
マンションの名義変更には、さまざまな費用がかかります。具体的に何がどのくらい必要なのか見てみましょう。
登録免許税(所有権移転登記の場合)
所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額に税率を掛けることで求められます。
税率は、名義変更の理由によって異なり、土地と建物それぞれにかかります。
なお、売買の場合、所有権移転登記の登録免許税は買主負担です。売主は、物件の住宅ローンが残っていて抵当権がついている場合の抵当権抹消登記などを行う場合に限り、該当の登録免許税を負担します。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産の数ごとに1,000円で、土地と建物1つずつの場合2,000円です。
<所有権移転登記の登録免許税の税率(土地、建物それぞれ)>
・売買の場合…2.0%
・相続の場合…0.4%
・その他(贈与など)…2.0%
<軽減税率について>
土地の売買の場合、2021年3月31日までのあいだに所有移転登記を受ける場合は、登録免許税の税率が1.5%となります。
建物の軽減税率は、住宅の内容によって異なりますので、詳細は国税庁の「登録免許税の税額表」を確認してください。
印鑑証明書や住民票などの必要書類取得費用
印鑑証明書や住民票、戸籍謄本といった書類の多くは、住んでいる地域の役所等で取得することができます。取得にかかる費用は、それぞれの自治体や取得する書類によっても異なりますが、1通ごとに数百円程度になるのが一般的です。
司法書士報酬(司法書士に依頼する場合)
名義変更を司法書士に依頼する場合は、司法書士報酬が必要です。必要な金額は、各種書類の取得費用のほかに、数万円程度の場合が多いです。しかし、作業範囲をどこまでにするか、誰に依頼するかといったことのほか、どのような理由で名義変更をするのかによって、報酬は変動します。
そのほかにかかる費用
名義変更の理由に応じて、登録免許税とは別に税金が発生します。売買であれば不動産取得税(買主)や所得税(売主)、相続であれば相続税、贈与であれば贈与税などです。
マンションの名義変更は司法書士に依頼するか、自分で行うべきか
マンションの名義変更は、司法書士に依頼するほか、自分で行うこともできます。それぞれのメリットとデメリットについてまとめました。
司法書士に名義変更を依頼する場合
司法書士に手続きを依頼するメリットは、なんといっても手続きが簡単で、間違いもないという安心感です。特に、手続きを行う不動産が複数ある場合や、相続人の数が多い場合は司法書士に依頼することをおすすめします。抵当権抹消や住所変更といった、所有権移転とは別の登記を同時に行う場合などは、手続きがとても煩雑になりますから、専門家に依頼したほうが確実といえるでしょう。
なお、住宅の売買で買主が融資を受ける場合や、不動産仲介会社を介して取引を行う場合は、司法書士によって登記が行われることがほとんどです。
司法書士に手続きを依頼するデメリットとしては、費用面が挙げられます。また、遠方の司法書士に依頼してしまうと、相談や手続きのために事務所へ出向くのが大変だったり、メールや電話でのやりとりのみで依頼内容の行き違いが合ったりといった問題が起こる可能性もあります。手続き内容に間違いがないか、しっかり対面で相談しながら進めたいというときは、自宅から近い司法書士を利用するのがおすすめです。
自分で名義変更の手続きを行う場合
自分で手続きを行う場合のメリットは、手続き費用を抑えられるという点です。また、不動産の名義変更はそうそう経験できるものではありませんから、「自分で手続きをしてみたい!」という方もいるかもしれません。
自分で手続きを行う場合のデメリットは、書類を集めたり申請書を作成したりといった手間がかかることです。法務局で相談をしながら行ったとしても、実際の書類作成は自分で行うことになるため、修正が必要になる可能性もあるでしょう。そのため、時間や労力をかけても構わないという、余裕がある方に向いています。
不動産の名義変更は簡単ではないが自分でもできる
不動産の名義変更をするためには、たくさんの書類を用意し、申請書を正しく記入する必要があります。不動産登記に慣れた方でないと、わかりにくい手続きも多いでしょう。とはいえ、自分自身で行えないというものでもありません。
親族間の贈与など、ある程度、時間に余裕を持って行える手続きであれば、法務局に相談しながらチャレンジしてみるのもいいでしょう。一方、売買などの場合は、司法書士に依頼するのが一般的です。
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