近年のライフスタイルの多様化に伴い、「マンションを買うなら新築」という従来の価値観にとらわれない人が増えてきました。そこで、「中古マンションを再生して暮らす」という選択肢が人気を集めています。住まい探しの時点で、リノベーションを前提にマンションを探す人も少なくありません。しかし、リノベーションは万能ではなく、できること・できないことを考えておく必要があるでしょう。
リノベーション前提で中古マンションを購入するときの注意点は?
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
ここでは、リノベーションを視野に入れてマンションを探す際に知っておきたいことや注意点について解説します。
- リフォームとリノベーションの違いは?
- リフォームは元の状態に戻すこと
- リノベーションはプラスアルファの価値を持たせること
- 間取りを一新するスケルトンリノベーション
- リノベーションのメリットとは?
- オリジナルの家づくりができる
- 見えない部分も変えられる
- 好立地で物件の選択肢が増える
- リノベーション前提で物件を購入する際の注意点
- デザインにこだわって機能が落ちることがある
- 古いマンションが新しくなるわけではない
- メンテナンスに手間とコストがかかる
- スタートしたら取り返しがつかない
- 周囲との軋轢が起きる可能性がある
- プロの知見が重要
- リセールバリューが落ちる
- 費用がかかる
- リノベーション前提でマンションを購入する際のポイント
- マンションの管理規約を確認する
- 目的を明確にして資金計画を立てる
- リノベーションのプロのチェックを受ける
- マンションをリノベーションするなら自分でも学ぶ意識を
リフォームとリノベーションの違いは?
リノベーションを前提にマンションを探すとき、知っておきたいのがリフォームとリノベーションの違いです。
一般的には、リノベーションもリフォームも行うことはほぼ同じで、名前が違うだけという認識の人が多いのではないでしょうか。実際、この2つの言葉に明確な定義や使い分けの規定はありません。しかし、リフォームやリノベーションの現場では、ある程度の共通認識を持ってこの2つを使い分けています。
まずは、この2つの言葉の意味について確認しておきましょう。
リフォームは元の状態に戻すこと
リフォームとは、これまであった物をきれいにすることや、マイナスの状態にある物を元に戻すことを指しています。
例えば、以下のようなことがリフォームにあたるでしょう。
<リフォームの例>
・壁紙を張り替える
・キッチンの古くなった設備を交換する
・傷んだフローリングを張り替える
・外装を塗り直す
リノベーションはプラスアルファの価値を持たせること
リノベーションは、これまであった物にプラスアルファの価値を与えて再生させることであり、ライフスタイルに合わせた総合的な改修を指します。
リノベーションの例としては、以下のようなことが挙げられるでしょう。
<リノベーションの例>
・間仕切りの壁を取り除いて広々としたリビングを作る
・お風呂場を全面改修して露天風呂を作る
・壁に断熱材を入れる
・ファミリー向けの間取りを一人暮らしに適した間取りに変える
工事の規模や施工範囲でいうと、リフォームが比較的小規模、リノベーションが比較的大規模ということになります。
間取りを一新するスケルトンリノベーション
リノベーションの中でも、骨組み以外のすべてを取り除いて作り直すような、大掛かりな変更を加えるリノベーションは、「スケルトンリノベーション」といいます。
スケルトンリノベーションは、住戸の内部にある柱や壁、床などをすべて解体・撤去し、間取りから一新する方法です。2部屋を1部屋にする、新たに子供部屋を作るといった部屋の増減だけでなく、キッチンや浴室の場所を変えるなど、水回りに手を加えることも可能です。
リノベーションのメリットとは?
大掛かりな手を加え、元の状態より価値を高くすることがリノベーションです。マンションをリノベーションすることのメリットを整理しておきましょう。
オリジナルの家づくりができる
リノベーションの最大のメリットは、住む人のニーズを反映した、世界で唯一の住まいを作り出せることでしょう。リフォームは大掛かりなものでも原状回復の範疇ですが、リノベーションになると、単なる回復にとどまらない独自性を出すことができます。
分譲マンションはある程度画一的なものですが、リノベーションによって、注文住宅に近い感覚で理想のマンションを実現できます。
見えない部分も変えられる
リノベーションであれば、リフォームでは手が届かない配管にも手を加えることができます。
キッチンそのものの場所を移動したい、浴室を広くしたい、トイレをもう1つ作りたいといった、単なるリフォームでは難しい大掛かりな改修ができるのは大きなメリットです。
好立地で物件の選択肢が増える
新築マンションに限定して探すと、住みたいエリアでは条件に合う間取りの物件がなかったり、あっても駅から遠く離れていたりと、なかなかニーズを満たす物件に出合えない場合があります。
しかし、リノベーション前提で中古マンションを視野に入れると、物件探しの幅はぐっと広がります。人気エリアや駅近の物件でも、新築より安く購入できるかもしれません。
リノベーション前提で物件を購入する際の注意点
メリットが多いリノベーションですが、期待しすぎは禁物です。リノベーションを前提にマンションを選ぶときに、知っておきたい注意点をご紹介します。
デザインにこだわって機能が落ちることがある
住まいに強いこだわりを持って、リノベーション前提でマンションを買う場合もあるでしょう。特に、築年数が経ったマンションや古民家などを、自分好みにアレンジして住みたいという人は、デザイン性に重きを置く傾向があります。
こうした場合に多いのが、デザインを優先しすぎて、頑丈さや住みやすさといった部分がおざなりになるケースです。
家はあくまでも「住むところ」。見た目も重要ですが、機能性もしっかり考えてリノベーションしましょう。
古いマンションが新しくなるわけではない
リノベーションすれば、古いマンションが新築同様になるというわけではありません。内装や間取りを変えて新しく見せることはできますが、リノベーションできるのは専有部のみですから、エレベーターや廊下などの共用部は古いままです。
また、盲点になりがちなのがドアや窓です。管理規約によっても異なりますが、国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」では、窓のサッシや窓ガラスは共用部になっており、居住者が勝手に交換することはできません。
近年のセキュリティの高まりを受けて、ガラスやサッシは飛躍的な進化を遂げていますが、リノベーションを前提に購入するマンションでは、その恩恵にあずかれないところもあるでしょう。音漏れや隙間風を防げなかったり、採光性の高い部屋なのにすりガラスだったりと、「古ければ古いなり」の部分が残ることを覚悟する必要があります。
メンテナンスに手間とコストがかかる
先に挙げた「古ければ古いなり」にも通じることですが、スケルトンリノベーションでない限り、配管はそのままです。築年数が経っていれば、それだけ配管部分も劣化している可能性が高いです。部屋はきれいになっても、配管が破損して生活に支障が出るリスクがあります。
リノベーション前提にマンションを購入する場合は、新築よりもメンテナンスに手間がかかり、コストもかさむという予測にもとづいて、十分な資金を準備しておかなくてはなりません。
スタートしたら取り返しがつかない
リノベーションは、やりだしたら取り返しがつきません。後悔のない綿密な計画を立てて臨みましょう。
スケルトンリノベーションの場合は特に、内装は跡形もなくなります。残したい物や活かしたい物がないか、じっくり考えましょう。
また、「やりだしたら止まらない」のも、リノベーションでよくあるパターンです。最初はリビングとキッチンだけリノベーションするつもりだったのに、見た目の差が気になるから居室にも手を入れることになったという人も多いです。際限なくリノベーションしていると、当初の予算を遥かにオーバーする事態にもなりかねません。目的と施工範囲は、できるだけ早い段階で決めておきましょう。
周囲との軋轢が起きる可能性がある
リノベーションは、人の出入りや騒音を伴う工事です。先に挨拶を済ませていても、いざ工事が始まった段階で周辺の住民からクレームが入るのは、よくあるトラブルです。 音が響きそうなところには、事前に断りを入れるだけでなく、工事開始後も適宜コミュニケーションをとってケアするようにしましょう。
プロの知見が重要
リノベーションで重要なことのひとつが、デザイナー、設計士、大工といったメンバーの知見の高さです。リノベーションをよく知らない人が担当だと、「デザイン性を重視して壁を取り払いたい」という居住者の要求に対して、よく検討もせずに「できます」と返事をすることがあります。技術的に壁を撤去することはできても、実はその壁は遮音や防音、保温のために必要なものかもしれません。
何でも「できる」と答える人よりは、壁1枚、床板1枚の役割までよく考えて状況を判断し、居住者にとってのベストを追求してくれる人にこそ依頼すべきです。
リセールバリューが落ちる
リノベーションは、居住者が自身や家族に合わせて、世界にひとつだけの部屋を作ることができます。それは、必ずしも万人受けするとは限りません。
中古マンションのリセールバリュー(再販価値)が高いのは、一般的で汎用的な物件です。リノベーション物件からの住み替えを考える場合、なかなか買い手がつかなかったり、売却価格が安くなったりする可能性があります。
費用がかかる
中古マンションを購入してリノベーションをしたほうが、新築より安いという考えは、必ずしも正しいとはいえません。壁材や床材、細かな設備の仕様までこだわったり、間取りを大きく変えたりすれば、それなりの人件費と工費がかかるからです。
また、築年数が古ければ、新たに耐震補強工事が必要になるかもしれません。浴室の床板をはがしたら土台部分が腐食していた、壁をはがしてみたらシロアリの食害があったというような思わぬトラブルが見つかれば、さらにコストがかかります。
リノベーション前提でマンションを購入する際のポイント
リノベーションを前提としてマンションを購入する際に、必ずチェックしておくべき3点のポイントをご紹介します。
マンションの管理規約を確認する
購入を検討しているマンションの管理規約を確認し、リノベーション可能な範囲や、使用して良い資材などをチェックしておきましょう。お風呂やキッチンなど設備の規格も確認し、好みの物が入るかどうかを確かめておくことをおすすめします。
目的を明確にして資金計画を立てる
予定外のリノベーションによる予算オーバーを避けるため、事前に目的を明確にして資金計画を立ててください。希望のリノベーションと予算が合わない場合、どちらを優先させるかも考えておきましょう。
リノベーションのプロのチェックを受ける
中古マンションの品質のチェックは、新築マンション以上に難しいものです。素人判断せず、第三者的な立場から住宅の状態を確認してもらうことをおすすめします。
欠陥検査をしてくれるホームインスペクションなどのサービスを活用して、プロの目で診断してもらいましょう。
マンションをリノベーションするなら自分でも学ぶ意識を
新築神話がいまだ根強く残る日本において、現在リノベーションは過渡期にあるといえます。リフォームとリノベーションという言葉が指す範囲が事業者によって異なるなど、整備されていない部分も多くあります。居住者の知識が不足していると、せっかくマンションをリノベーションしても、将来的にメンテナンスで苦労することになりかねません。
リノベーションを前提としたマンションの購入を検討する際は、必ず自分自身でリノベーションの知識を得ることに努め、正確な判断ができるようにしましょう。
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