2020年4月、不動産にも影響がある民法の改正が行われます。これによって、「瑕疵担保責任」がなくなり、新たに「契約不適合責任」という規定が加わります。これは単なる名称の変更ではなく、買い主や売り主に大きな影響を与える変更となりそうです。
契約不適合責任とは?2020年の民法改正で変わる瑕疵の責任範囲
- マンションバリューマガジン編集部
- 株式会社マーキュリー
マンションを購入する際は、買い主に不利な売買契約を結んだり、購入後に問題が見つかったのに泣き寝入りしたりすることがないよう、正しい法律の内容を知っておくことが大切です。民法に契約不適合責任が加わったことで、買い主と売り主にどのような影響があるのか解説します。
民法改正で瑕疵担保責任がなくなる?
改正前の民法(債権法)では、瑕疵担保責任が規定されています。不動産の取引に関連する法律は数多くありますが、中でも民法は、不動産売買の契約や物件の瑕疵などに関わっています。
瑕疵担保責任とは、「契約後、買い主が知らなかった瑕疵(問題点)が見つかったとき、瑕疵を知った日から1年以内であれば、売り主に損害賠償請求をしたり、契約解除をしたりすることができる」というものです。この責任は、契約書に特別な記載がない限り、10年間売り主に課せられます。つまり、瑕疵担保責任は、買い主が知らないあいだに瑕疵のある物件を買わされて、不利益を被ることがないように守ってくれる規定ということです。
しかし、瑕疵担保責任には問題もありました。特に中古物件の売買においては、契約書に「瑕疵担保責任は契約締結から3ヵ月」といった文章が記載され、責任期間を極端に短く設定されることが多かったのです。また、たとえ瑕疵があったとしても、損害賠償請求ができるのは「瑕疵がないと認識していたために起こった不利益」についてと、範囲が狭いものでした。
そもそも、瑕疵担保責任では、何が「瑕疵」にあたるのかも明確ではありません。そこで、2020年4月に民法改正によって、新しく契約不適合責任が導入されることになったのです。
契約不適合責任とは?
契約不適合責任とは、その名のとおり「契約が履行されなかった場合の責任」のことです。不動産取引においては、売買契約や請負契約を結び、対象の物件の詳細について取り決めを交わします。この取り決めどおりに物件が引き渡されなかった場合、売り主は契約不適合責任を負うことになります。
例えば、「電源タップを部屋に3ヵ所つけてもらうはずが、2ヵ所しかついていない」というような場合、売り主には契約不適合責任が生じます。また、「床材はホワイトオーク」と指定していたのに通常のオーク材が貼られてしまった場合なども、契約不適合に該当します。
瑕疵担保責任から契約不適合責任になって変わること
瑕疵担保責任から契約不適合責任になったことによって、買い主と売り主には、それぞれどのような影響があるのでしょうか。変化することについて詳しく説明します。
物件に問題があったときに買い主が請求できる内容
瑕疵担保責任では、買い主が売り主に対して請求できるのは、「瑕疵がないと認識していたために生じた損害に対する損害賠償請求」、もしくは、「瑕疵があるために目的が達成できない場合に限った契約解除」のみでした。
しかしこれは、どちらも実際に利用するにはハードルが高いものです。そこで、契約不適合責任では、売り主の契約不履行に対して、以下の4つの措置がとれるようになりました。
<売り主の契約不履行に対してとれる措置>
・契約どおりに補修や追納を行う請求
・補修や追納が行われない場合の減額請求
・契約不履行がなかった場合に得られたであろう利益に対する損害賠償請求
・目的を達成するのが難しい場合の契約解除
売り主が責任を負うべき期間の変更
売り主が責任を負うべき瑕疵が、「契約締結時までに生じた瑕疵」から、「物件の引き渡しの時点までに生じた瑕疵」に延長されます。
また、瑕疵担保責任では、責任を負う期間は「権利を行使できるようになったとき(契約締結時)から10年間」でした。一方、契約不適合責任では、権利を行使できるようになったとき(物件引き渡し時)から10年という従来どおりの決まりのほか、買い主が権利を行使できると知ったとき(不適合が見つかったとき)から1年以内に通知すれば、5年間にわたって追完請求(補修や追納等の請求)や損害賠償請求できる権利があります。
この点について、買い主は請求がしやすくなりましたが、売り主に不利な変更であるといえます。また、期間は契約書によってさらに短縮されるケースもあるでしょう。
隠れた瑕疵に限らず責任を追及できる
瑕疵担保責任では、売り主が責任を負うのは隠れた瑕疵に限られていました。契約不適合責任では、隠れた瑕疵に限らず、契約の履行時までに生じた契約の不適合について、売り主は責任を負わなければいけません。
つまり、買い主が売買の契約締結時にあらかじめ理解していた瑕疵であっても、契約不適合責任を追及されるかもしれないということです。これは、売り主にとって非常に不利な内容だといえるでしょう。そのため、契約書に特約をつけることで、買い主が認識している瑕疵を対象外とするケースもあります。
契約書の十分な確認がトラブルのない契約につながる
契約不適合責任が売り主にとって不利になりすぎないよう、今後、売り主側は契約書にさまざまな特約を記載するようになっていくでしょう。瑕疵担保責任については、引き渡しから3ヵ月とするという契約が多く見られましたが、契約不適合責任についても同様のケースが多くなると予想されます。また、契約書に物件の詳細を記載した上で、買い主が認知している瑕疵については責任の範囲外とすることもあるでしょう。
このような契約は、十分に内容を確認し、理解して締結するのであれば、売り主にとっても買い主にとってもメリットがあるものです。契約を結ぶ内容が最初からはっきりしていれば、買い主にとっても、「思わぬトラブル物件をつかまされた!」というリスクを軽減できます。
大切なのは、契約書の内容を売り主、買い主双方が十分に納得した上で契約を締結することです。両者の信頼関係をしっかり築いていくことが、後のトラブル回避につながります。
売買の透明性を上げるインスペクション
インスペクションは、物件の状態を住宅の設計や施工など、詳しい第三者の目で確認してもらう制度です。事前にインスペクションを利用し、物件がどのような状態にあるのかを明確にしておくことで、売買の透明性を上げることができるでしょう。
インスペクションを利用すれば、買い主と売り主の双方が、瑕疵が明らかになった上で共通の認識のもと物件の引き渡しを行います。さらに、売り主が住宅瑕疵保険に加入していれば、万が一の際も保険で買い主からの請求に対応できます。買い主としても、インスペクションが行われていれば安心感がありますし、住宅瑕疵保険にも加入している物件となれば、一層安心して契約できるのではないでしょうか。
契約不適合責任によって、売り主の責任の範囲や期間が大きくなったことで、インスペクションの重要性がさらに高まりそうです。
後のトラブルを避けるためにも契約不適合責任を理解しよう
マンションの売買は非常に高額な取引ですから、後々トラブルになると、生活への影響も大きくなります。契約不適合責任の内容を理解し、どのような点に気を付けて契約を締結すべきなのか、意識しておきましょう。
法律は、個人・法人の利益を守り、正しい取引が行われるために存在しています。契約不適合責任の内容を踏まえ、透明性の高い取引を行うようにしてください。
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